それでも閉鎖的な町民は、口をつぐんだまま。江見が「次に何が起きようとしているのか、あるいはその可能性があるのか、そしてどうすれば未然に防げるのか」を考えなければいけないと訴えても、「外部の方にすべてをお話するわけにはいきません」「私たちも頼之さんの真意についていろいろ考えたんです。しかしいくら考えても分からずでして」と笑って取りつくろおうとするだけだった。
すると、ナン丸が畳をこぶしでドンとたたく。その目にはこれまでにない力強さが宿っていた。
「考えが及ばないのは、きっと大して考えてないからですよ。この土地にしかない慣習、知恵、苦しみ、それは決して軽んじるべきものではない。でも、自分たちを守ろうとするあまり、かたくなに耳をふさぎ、考えるのをやめるのって、罪じゃないですか?」
頼之は、丸神の里では畏怖の存在。だが、何の目的からか、東京で多くの人の命を奪ったのは確かだ。人を傷つけてしまう能力に恐れも抱くようになったナン丸は、力を受け継いだ一族の者としての何かが芽生えたようだった。
大学4年生なのに就職活動ものんびりだったころとは違う頼もしさが備わった成長に、心が沸き立った。
そんなナン丸の訴えにより町民たちは、幸子の大叔父で、丸川町を治める長である隆三(伊武雅刀)との話し合いを提案。翌日、ナン丸たちが東丸家に向かっていると、時を同じくして隆三の元を頼之と高志が訪ねていた。
里のために人殺しもやむを得ず、だが「悪夢を終わらせなければならない」という頼之に、「やけくそにしか見えねぇ」と隆三。ところが、そこに東京で頼之に裏の仕事の仲介をしていた武器商人の増元(深水元基)が武装隊を率いて乗り込んできた。頼之らが球体の力で応戦するも、隆三と高志が銃撃で命を落としてしまった。
高志が銃撃された瞬間、東丸家に入る直前で「今…」と異変を感じた幸子。隆三に続いて、高志の遺体を発見すると、がくぜんとしながら開いたままだった目を閉じさせ、しばらくしてから高志の体をつかんで、「何で?何で?」とわめいた。
第6話で描かれた、球体の力があることによって高志に傷つけられ、恐れていた幸子。「こいつに言うことがあるの」に続く言葉は明かされなかったが、慟哭ともいうべき幸子の姿は胸に迫るものがあった。
幸子を演じている藤野は、2015年に公開された映画「ソロモンの偽証」で主演デビューし、そこで高い演技力が評価されて以来、実力派俳優として知られている。当サイトの本作にまつわるインタビューで、監督の提案で感情をフラットにする演技をしたそうで、「芝居をやっていく中で感情をそぎ落とすという作業を経験したことがなかったので、すごく新鮮な感覚でした」と語っていた。物語を引き締めてきたその演技が、第8話のこのシーンでの感情が爆発するという姿をいっそう引き立てたといえよう。
球体の力の悲劇はいつまで続くのか。成長を見せたナン丸に期待しつつ江見が気付いた謎のヒントをつなぎ合わせながら、いよいよ残り2話で三上演じる丸神教授の本格登場も待たれるところだ。
「七夕の国」(全10話)は、ディズニープラスのスターで毎週木曜に最新話を独占配信中。次回は8月1日(木)に第9話が配信される。
◆文=ザテレビジョンドラマ部
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