アニメ「【推しの子】第2期」(毎週水曜夜11:00-11:30ほか、TOKYO MXほかにて放送/ABEMA・ディズニープラス・FOD・Hulu・Leminoほか)の第十七話「成長」が8月7日に放送された。ついに幕が上がった舞台「東京ブレイド」。稽古中、自分の演技のダメさ加減を痛感しもがいていた鳴嶋メルト(CV.前田誠二)は陰で努力を重ね、本番で開花。メルトの覚醒表現、迫真の演技が「アニメ化ならではの神演出」「凄すぎて目ん玉飛び出た」など大きな反響を呼んだ。(以降、ネタバレが含まれます)
原作コミックは5000万部という超ヒット作「東京ブレイド」の2.5次元化とあって、女性ファンを中心に劇場は満員御礼という光景になっていた。主演のブレイドは実力派演劇集団「劇団ララライ」の看板役者、姫川大輝(CV.内山昂輝)。そこにララライの若きエース・黒川あかね(CV.石見舞菜香)演じる鞘姫、元天才子役の有馬かな(CV.潘めぐみ)演じるツルギがダブルヒロインに立つ。さらに抜群の人気と原作再現の演技力を持つ2.5次元俳優の鴨志田朔夜(CV.小林裕介)、フリープロデューサー・鏑木勝也(CV.てらそままさき)の推薦で入った若手のアクア(CV.大塚剛央)も重要な役回りを任されている。
舞台プロデューサーの雷田澄彰(CV.鈴村健一)が作った隙のない布陣だが、唯一不安視されていたのがモデル上りで演技経験が未熟なメルトだった。メルトも鏑木の推薦で入ったキャストだが、周囲とのレベル差は歴然。新宿クラスタの鬼集団のリーダー、キザミという重要な役回りだが、雷田の目には、演技はよくて及第点に届くというレベル。案の定、せっかくの見せ場である匁(もんめ)との対決シーンでは、メルトの浮いた演技が目立ちはじめる。
これまで顔の良さだけで適当に仕事をこなし、以前に出演したドラマ「今日は甘口で」では絵に描いたような大根ぶりを見せていたメルトだが、そのときアクアが仕掛けた本気の演技に打たれたことで、自分のダメな演技が作品を台無しにしてきていたことを悔恨。それ以来、心を入れ替え、演技に本気で取り組んできたメルトは、自分の実力不足に苦悩しながらも努力を積んできた。日々のトレーニング、柄がボロボロになった刀、びっしり書き込まれた台本、読み込んだ原作。そして、アクアからもらったアドバイスは、「演技が下手に思われているならそれを活躍する」ことだった。
シーン、演技のレベルともに鴨志田が演じる匁に追い詰められてからの反撃。その1分に自分の全てを注いだメルトは、本番で覚醒する。強いと思っていた自分が本当は全然弱いと気づいたキザミの気持ちに、劣等感に打ちのめされた自分の“悔しい”という感情を乗せ、指先まで込めた気迫の感情演技で会場を飲み込むと、後に残ったのは圧倒された観客たちの静寂。そして、遅れてやってきた万雷の拍手だった。
視聴者からも、「負けたくないというメルトの気持ちが画面越しにまで届いた」「メルトくん、1分間の領域展開。全部伝わってきたよ」といった喝采が飛ぶ。さらに覚醒するメルトの心理描写も美しく、ドラマティックな作画で描かれ、これを目撃した視聴者からは、「アニメじゃなくて絵画とかアートとかのレベルだった」「原作で大好きだったシーン。アニメ化ならではの神演出」「凄すぎて目ん玉飛び出た」など、絶賛のコメントが集中する。
そして、出番を終えた舞台裏。それまでメルトの素人演技を見下してきた鴨志田はメルトの感情演技を認め、称える言葉を送る。一方、観客席では世界一厳しい目でメルトを見ていた「今日あま」の原作者・吉祥寺頼子(CV.伊藤静)が感動の涙を浮かべていた。こちらにも「チャラくても2.5次元俳優として芝居には本気の鴨志田。メルトの努力を認めたシーンにクソ泣いた」「吉祥寺先生に届いたぞ、メルトくん!」といったメルトを称えるコメントが溢れていた。
「やっぱ演技は感情乗ってなんぼだよな」――「今日あま」のときにアクアにかけられたその言葉の意味を実感し、血のにじんだマメだらけの手のひらを握りしめるメルト。「成長」というタイトルにふさわしく、見事にひと皮剥けた彼に、アクアは「そうかよ」と微笑む。今回はメルト一色に染まったエピソードとなり刀鬼役アクアの出番はなかったが、彼も感情演技を行おうとするとトラウマによる発作が起こるという問題を抱えている。
次回ではいよいよ刀鬼が登場すると思われるが、アクアは感情演技をどう克服するつもりなのだろうか。放送後のSNSには、「今回は感動的な成長譚だったけど、次回はエグそう」「アクアのやろうとしていることが不穏そうなんだよなあ」などのコメントが寄せられている。
文/鈴木康道
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