この土地を捨てたか、あるいはカササギたちが滅んだか。いずれにしても現れなくなって数百年たち、もう期待は持てない。最大の力を持ち、神官となった頼之も同じように考えたはず。ナン丸たちに一通りの説明をした丸神教授は、頼之は丸神山に現れると待つことに。丸神教授は、頼之の目的はすべてのカタをつけるため「自らがこの丸神山を消滅させること」だというのだ。
その通りに頼之は現れた。国の命令で頼之を消すためにやって来た武装隊に紛れて。武装隊を亡き者にした頼之は、たどり着いた己の考えを語る。備わった能力で生み出す巨大な黒い球体は、“窓”ではなく、“玄関”だったのではないかと。「向こうから迎えに来ないなら、こちらから出向く」と、丸神山の頂上で巨大になった黒い球体へ飛び込むつもりの頼之。すると、能力に苦しみ、ずっと悩んできた幸子も付いて行こうとする。
頼之のほうに手を伸ばす幸子の手をつかんで引き止めたナン丸は、泣きながら叫ぶ。
「みんな…この世の広さを分かってない!広過ぎて、広過ぎて掃除すんのだって大変なんだよ。世界中のこと、ネットやらテレビで分かったってそんなの全部うそだからな!世の中、誰も気付かないほんの小さな場所にだって、いろんな人の思いや知恵や失敗や、やり直しが詰まってるんだよ。この世界は目で見えている大きさの100倍も1000倍も広いんだ」
幸子たちが苦しんできたことは、広い世界から見ればごくごく一部のこと。ナン丸の言葉には、希望があり、普遍的なこととして、心に響いた。広い世界に飛び出せば、新たな未来があるはずだ。
日本の民俗学、風土的なものを取り入れた謎を組み込んでSFに仕上げた面白さがあり、“怪作”ともいわれた原作の世界をほぼ忠実にドラマ化した本作。
最終話のクライマックスは、頼之が考え通りに黒い球体に自ら入り込んだ。どんどん大きくなる黒い球体、頼之を飲みこみ、やがてパンという音と共にはじけ、丸神山の頂上がえぐられる。VFX技術を使った再現は、迫力に満ち、映像化の醍醐味(だいごみ)が存分に味わえた。
そして、この物語を若手ながら確かな演技力でけん引した細田、圧倒的存在感で世界観を引き上げた山田と三上もさすがだった。
SNS上には「独特な世界観のSFサスペンスで見応えあった」「配役が絶妙」「各人の演技がハマってて良かった」「120点の出来だった」「原作愛があるドラマだった」「よく映像化できたなぁって。めちゃくちゃ凄かった」「最終話の映像はとくに綺麗だった!!」といった感想が上がっている。
「七夕の国」(全10話)は、ディズニープラスのスターで独占配信中。
◆文=ザテレビジョンドラマ部
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