アニメ「【推しの子】第2期」(毎週水曜夜11:00-11:30ほか、TOKYO MXほかにて放送/ABEMA・ディズニープラス・FOD・Hulu・Leminoほか)の第十八話「太陽」が8月14日に放送された。舞台「東京ブレイド」の物語は進み、鞘姫率いる渋谷クラスタと、ブレイド率いる新宿クラスタの全面対決に突入。鞘姫役を演じる黒川あかね(CV.石見舞菜香)と、ツルギ役を演じる有馬かな(CV.潘めぐみ)の演技対決に注目が集まった。(以降、ネタバレが含まれます)
今話で盛り上がったかなとあかねの演技対決。回想シーンに見える2人の過去は、特に大きな反響を呼んでいた。今でこそ天才役者と呼ばれるあかねだが、その土台となる役への深いプロファイリングは、もともとはかなへの憧れからくるものだった。
大好きなかなのようになるために、あかねは一生懸命にかなの演技を分析していたが、出来レースのオーディションでかなに拒絶されてからは、かなの気持ちを知ろうと心理学に没頭するようになる。そうして生まれたのが、役の人物を考察し、自分の中に取り込むプロファイリング演技だった。それと同時にあかねが理解したのは、かなが抱えていた恐怖。あかねがプロファイリングした通り、かなは子役としての賞味期限が切れるにつれて減っていく仕事、それにより必要とされなくなる恐怖に怯えていたのだ。
幼少期から子役として活躍し、年齢=芸歴という経験値を土台にした“受けの演技”で共演者の演技や作品を支える役者・有馬かな。しかし、子役時代のかなの演技は今とは真逆のもので、自己主張が強く、身勝手で、圧倒的な演技で自分自身が輝く太陽のようなものだった。それが子役の卒業とともに仕事が減りはじめ、使ってもらえる役者でいるために、かなは大人にとって使いやすい、周りを引き立てる受けの演技をする役者になっていったのだ。
かなにしてみれば捨てられないための自己防衛策。芸能界で生き残るための手段であったが、彼女の太陽の演技に憧れたあかねにとって、そんな舞台装置に徹する演技は認められるものではなかったのだろう。本気のかなに勝つために、かなの本気の演技を引き出すために、あかねは自分の全力の演技をぶつけていく。
これまでも事あるごとに衝突し、犬猿の仲と見えた2人だが、今回はっきりと分かったのは、かなはあかねにとっての“推しの子”ということだ。
「私はあなたがいたからここにいる」――あかねが胸の内で噛み締めたこの言葉からは、かなへの強い思いが感じ取れる。あかねにとってかなとの勝負は勝ちたいというよりも、本当はかなに自分が憧れた本来の演技を取り戻してもらいたいという気持ちの方が強いのかもしれない。しかし、そんなあかねの全力演技も届かないほど、かなのトラウマは想像以上に彼女の心に深く根を張っていた。
挑んでくるあかねに対して、かなも心を躍らせて本気の演技をぶつけようと踏み込むが、直前、仕事がなくなったときの記憶が走り、その足が止まってしまう。結局本気を出せず、かなはいつものように受けの演技に戻り、あかねを輝かせることに徹してしまう。そんな彼女の演技はレベルは高くともどこか寂しそうに見えるのは気のせいではなかったはずだ。
SNSにも「あかねの狂気のような執着心、それ以上にかなの孤独な闇は深かった」「演技が大好きなはずなのに、演技しているかなちゃんはとても寂しそう」「本気になれないかなは、ある意味感情演技ができないんだな」といった感想が並んでいく。
もどかしい思いでかなとの緒戦を終えたあかねだが、今のかなの演技に不満を持つのはアクア(CV.大塚剛央)も同じだった。子役時代のかなを知り、新生B小町で輝くかなを間近で見ているアクアにとって、本当のかなの魅力は全くの別物。「あいつは自分のことを分かってない。有馬は、私を見ろって顔してるときが一番輝いてるのに」と語るアクアは、本気のかなに勝ちたいというあかねに並び、「前に引きずり出すぞ、俺たちで」と宣言する。
次週はアクアも加わっての第2ラウンドか? 「目立ちすぎて失敗した過去に引きずられてるかなを思いっきり引っ張り上げてほしい」「かなちゃんの目を覚ませるのに、誰よりもかなちゃんの事が好きな君の力が必要なんだ」など、2人には多くの視聴者から期待が寄せられている。
文/鈴木康道
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