連載当初からのファンである監督とプロデューサーが、丁寧に作り上げていったストーリーの上で活躍するのは個性的なキャラクターたち。その強い個性を実写として表現するうえで、役者陣はキャラクターのもつ要素を多面的に捉えていったという。
主人公であるナン丸は“役に立たない超能力”を持つ平凡な大学生。楽観的で他人に流されやすい性格は、細田の性格とはすこし離れていたというが、共演シーンの多かった藤野が話すように「人を包み込むような優しさや、人の立場になり行動を起こしてくれる人という要素は似ている」という。他人への優しさという部分の繋がりが、愛される主人公という作品において非常に重要なポイントを押さえることに成功した。
その藤野が演じる東丸幸子は、丸神の里に住み、悪夢に苦しむという役どころ。里に囚われた女性の苦悩の中に隠れる柔和な性格を、撮影現場で監督と引き出していった。さらに、幸子の兄・東丸高志を演じた上杉柊平は、去勢を張る奥で常に持つ弱さを意識して撮影に挑んだという。
そして、本作の登場人物を語るうえで外すことが出来ないのが、山田孝之演じる頼之である。●(謎の球体)の力で日本中を恐怖に包む謎の男である頼之は、特殊メイクを施すことで山田の素顔が一切見えない風貌での芝居となった。顔の表情を演技に用いることが難しい中では演じきる山田の姿は、主演の細田をはじめ共演したキャスト陣にも大きな感銘を与えたという。
監督は「全員が飲まれた瞬間がある。凄い奇跡を見た。化学反応が巻き起こっていく2~3週間だった」と当時の事を振り返るが、本編に登場する山田演じる頼之を見ると、その言葉が全く大袈裟ではないことに気付くだろう。個性的なキャラクターをキャスト陣が十二分に理解し解釈することで、説得力が増し、より魅力的なものになっていった。
刺激的なストーリーと、魅力的なキャラクターが揃った中で行われた撮影は、VFXの技術を最大限に活かした壮大なものだったという。三上は「『スター・ウォーズ』を見ていて大変だろうなと思っていたことが、自分に降りかかってきた」と語る。グリーンバックを使用しての撮影、触れたもの全てがエグられる●が登場するシーンは、目に見えないものを撮り、その前で役者は演技をするという、難しさを孕んでいる。その中で監督と役者陣が言葉や模型などを通じてそのイメージを共有していった。
本映像ではその一部が映されているが、例えば山田と上杉が監督と共に、●の大きさや進む速度などを詳細に話し合っていくようすは、役者陣とスタッフに生まれた厚い信頼関係が、作品の完成度を高めていくことを感じさせる。
それぞれが丁寧に作りあげていくことで完成した「七夕の国」は、配信開始とともに大きな話題を集めていった。物語が進むにつれて明かされる謎の数々と、すべての事件の首謀者である頼之の目的。そしてナン丸と頼之、同じ能力をもつ二人が選ぶ全く異なる選択が見る者の心を引き込んで離さないが、このナン丸と頼之を描くにあたり、監督は「二人の真ん中にいるのが日本人。ナン丸と頼之は日本人の両端にいるイメージ」で撮影したと明かした。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)