アニメ「【推しの子】第2期」(毎週水曜夜11:00-11:30ほか、TOKYO MXほかにて放送/ABEMA・ディズニープラス・FOD・Hulu・Leminoほか)の第十九話「トリガー」が8月21日に放送された。輝きを取り戻して太陽の演技をする有馬かな(CV.潘めぐみ)に、「太陽のかなちゃん復活」「キラキラ満点のかなちゃん最高」と歓喜の声が上がる一方、復讐に染まるアクア(CV.大塚剛央)には「しんどくて見てられない」「アクアの覚悟がつらすぎる」と視聴者は騒然。2人の演技の対比に注目が集まった。(以降、ネタバレが含まれます)
前話に引き続き展開していく舞台「東京ブレイド」の物語。本気のかなに勝ちたいと演技対決を挑んだ黒川あかね(CV.石見舞菜香)だったが、かなはかたくなに殻に閉じこもり、受けの演技を崩さない。それを見て、かなの本気を「引きずり出すぞ」と宣言したアクア。そして始まった今話は、アクアとかなの感情演技の対比が目を奪うエピソードとなった。
姫川大輝(CV.内山昂輝)が仕掛けたアドリブに対して、さらにアドリブで仕掛け返すアクア。それによって、かなが舞台の真ん中に引きずり出される。かなは役者の世界で生き残るために、大人が使いやすい調整役の演技を自分に課してきた。それは前回あかねがプロファイリングした通り、必要とされなくなる恐怖からくるものであったが、挿入された回想によって、もっと根深い、かなの母との関係に起因するものであることが明らかになる。
芸能人になりたかったかなの母は娘に夢を託し、かなの活躍を通して芸能界の味を楽しんでいた。そんな母であるから、人気の翳りと共に家庭環境はしだいにおかしくなっていった。かなが自由奔放な演技を止め、調整役の役者になったのはそれからだ。五反田奏志(CV.加瀬康之)の助言を受け、生き延びるたびに選んだ人に合わせる演技。「その方が、みんな喜ぶから。大人の人も、ママも。私は主役じゃなくていい」と。
しかし、そんな殻に閉じこもったかなを、アクアは自分が調整役を引き受けることで解き放つ。姫川が言った通り、役者同士なら動きで語り合える。「俺も、有馬がやりたい芝居を見てみたい」という芝居に乗せたアクアの言葉に背中を押されかなが見せたのは、好きな演技を好きなようにやる、子役時代の太陽の演技だった。
かなという太陽から放たれた光が舞台を輝かせるこのシーンはクレパス風の作画も相まって、SNSでも話題に。「この作画はセンスの塊」「天才の復活、胸アツの瞬間!」と喝采を呼び、また、「かなちゃん…かなちゃん…かなちゃん…有馬かな!」と、帰ってきた“推し”にドキドキ演出でときめくあかねの姿にも「あかねはもうかなと付き合っちゃえよw」「推しに大興奮のあかねが可愛い」と大反響を呼んでいた。
今話冒頭では姫川の感情演技とアクアの無感情演技が炎と氷のような対比で描かれたが、それ以上の対比となったのが、かなの太陽の演技に対するアクアの復讐のドス黒い演技だ。
アクアは感情演技を行おうとすると、パニック症状を引き起こしてしまう。アクアとルビーがアイの子どもであると気づいていた五反田から、発症のトリガーとなっているのは「演技を楽しむことへの罪悪感、ひいてはアイ、お前の母親への罪悪感」だと見抜かれる。演技から離れて治療に専念するのも手だという五反田に、「アイの無念を晴らすことだけが俺の生きる意味だ」と拒否するアクア。
もともとアクアが芸能界の道に入ったのは、アイを殺した犯人を捜し出し、復讐を果たすこと。しかし、アクアは自分にかなやあかねが持つようなスター性がないことを自覚している。演技の実力はあっても感情演技ができないアクアが役者としての評価を高めることは難しく、五反田もそれを分かっていたのだろう。芝居を楽しめることが芝居の上手い役者たちの才能だとしたら、アクアには「お前はその逆を行け。苦しみながら芝居をしろ。お前にとって、演技はつらく、苦しいものであれ。楽しいなんて二度と思うな」と、葛藤に満ちた声で助言をする。
第十六話で「足りない才能を補うために使えるものは全部使う。それが僕のやり方だ」と決意を固めていたアクアだが、その才能を補うための武器とは、復讐心を糧とした鬼気迫る感情演技であったわけだ。
復讐のためだけに茨の道を突き進むアクアの演技は、まさに闇。かなの瞳には美しい星が宿ったが、アクアの瞳の星は闇色へと変化する。そして、「お前らを下して、俺はこの業界での評価を手にする」「他は何もいらない、俺にとって、演じることは復讐だ」と心の中で宣言するアクア。太陽の演技とドス黒い演技の対比は視聴者を騒然とさせ、「見ていてボロボロと涙出てきた。アクアには幸せになってほしいと思ったよ…」「深すぎる心の闇、アクアの心が心配」「アクアの感情演技、スゴイ鳥肌立った」など、多くの感想を呼び込んでいる。
文/鈴木康道
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