<南くんが恋人!?>ドラマGPが飯沼愛&八木勇征を絶賛「2人が演じるからこそ、ちよみと南くんの“儚さ”が余計に強くなっている」

2024/09/07 06:00 配信

ドラマ インタビュー

“リアリティー”と“情報量”の間で試行錯誤を繰り返した「15センチの世界」


――グリーンバックでの撮影は、キャストだけでなく製作上の苦労も多かったと思いますが、今回一番苦労した点はどういったところになりますか?

純粋に、撮影日数がほぼ倍かかってしまうんですよね。なぜかというと、まずはちよみの方のお芝居を全部撮影して、その後今度は南くんの方を撮っていくので、当然どちらも同じ日には撮れないんです。そうすると、南くんは南くんだけで撮る日が別にあるんですが、その時はちよみのカットバックの相手側を撮っているようなものなので、結果的に普段より撮影日数や時間が倍かかるというのがすごく大変だなって思いました。

それから、昔と違って今は当然画質とか一枚の画から伝わってくる情報量が過去の作品――4作目はわりと近い年代だったんですが、それ以前の3作とはやはり大きく違いがあって。「どれくらいの画の作り方で南くんとちよみを見せるのいいんだろう」というのは、いまだに試行錯誤しています。

わかりやすく言うと、リモート会議で背景をバーチャルな映像にされることがあると思いますが、実は南くんのシーンの撮影はこういう撮り方に近いんです。実際に撮影した背景に南くんをはめていくんですが、ドラマにおいて南くんにピントが合ってる場合、背景って本当はボケるものなんです。でも、リモート会議の画面では相手にピントが合っていても背景も何となくピントは合っているという。僕らはその画を作っていかなきゃいけなくて。

最初はリアリティー重視で、「南くんがこのサイズだったら後ろの背景のぼけ方ってこうなんじゃないか」といろいろ試行錯誤をしたんですが、リアリティーを追求すればするほど、逆に(リモート会議で背景をぼかした時のように)後ろがぼけて見えなくなってしまって。1枚の画の情報量としてはあまり正しくないというか、美しくないんじゃないか。そんなことを日々探っていました。

南くんのシーンには、何気ない場面であっても多くの情報量が詰め込まれている(C)テレビ朝日


――ドラマをご覧になっている視聴者の皆さんはあまり意識をされていない部分かもしれませんが、背景の濃淡や見せ方というのは、ドラマの「画作り」において非常に重要なお話ですね。

そうなんです。変な話、人間の目で見てる時って、どこにでもピントが合っているじゃないですか。だけど、いざテレビになるとカメラを通してその世界を見ているので、レンズのピントが合う範囲はどうしても限られてしまうんです。

背景がぼけているとなかなか、南くんとの対比、サイズの違いがうまく表現できなかったりするので、その辺りがポイントかなと、やりながら、カメラマンと一緒にアイデアを貰いながら、探っていった感じですね。


「ちょっとだけ背中を押してあげられるような、前向きな終わり方ができたら」


――個人的には、第7話で南くんが父親と和解する場面や、堀切家の面々にちよみが「秘密」を打ち明ける様子など、数々のシーンにグッと来てしまいましたが、服部さんの中で特にグッと来たシーンを教えてください。

まさしく7話の南くんがお父さんとお酒を酌み交わすシーンもそうですし、その後のちよみと楓のシーンにもグッと来ました。南くんが15センチになってからずっと一緒にいたちよみが、南くんを実家に置いてきたことでこの何週間で初めて一人になって、寂しさなどを抱えながら家に帰った時に、楓がそんなちよみを見て「あなたのことを全面的な支持する」と声をかけるんです。

そのシーンは先日撮影していたんですが、現場で見ていても泣けましたね。岡田さんの脚本も巧いんですよ。それまで楓はちよみのことをずっと「ちよみ」と名前で呼んでいたんですが、あそこのシーンだけは「あなた」という言い方に変えているんです。それは冷たい感じではなく、ちよみという一人の人間を認めてるからこそ、「あなたのことを支持するし、あなたの考えを全面的に応援にする」なんですよね。

誰が何と言おうと自分の娘だからということもあるけど、あなたが尊敬できる人間だからということ楓が言うんですけど、そこのせりふのチョイスは「さすが岡田惠和だな」と思いました。それをちゃんと言い分けた楓役の木村佳乃さんも良かったし、それを受けた飯沼さんの表情も素晴らしかったし、本当に素敵なシーンだなと思いました。

楓(木村佳乃)が母としてちよみ(飯沼愛)に思いを伝えた感動のシーン(C)テレビ朝日


――これまで何度も映像化されてきた「南くんの恋人」だけあって、「結末」をどのように描くのかにも注目が集まっていると思います。最後に、「南くんが恋人!?」の結末について、何かヒントとなることがありましたら教えてください。

今回岡田さんとやる前に一つだけ決めていたのは、「この物語はひと夏の話にしよう」ということで。夏の終わりって、何十年生きてきても寂しくて悲しくて何とも言えない思いに必ずなるじゃないですか。でも、また秋がやってきて冬がやってきて季節は巡っていくわけで。そういう日常が続いていくという。

それは別にドラマの世界だけじゃなくて、僕らだって視聴者の皆さんだって生きていればいろんな悲しいことや辛いこともいっぱいあると思うんです。季節が巡ればまた新しい日々が始まっていくし、僕らはその日常の中で前を向いて歩いていくわけですし。

そんな(辛い思いを抱えた)人たちに向けて、このドラマと岡田さんの脚本を通して、ちょっとだけ背中を押してあげたいなと。岡田惠和の脚本ってそういうものだと思っているので。ラストはそっと視聴者の方の背中を押してあげられるような、少しだけ前向きな終わり方ができたらいいなと思っています。

「南くんが恋人!?」最終回は、9月10日(火)夜9:00より放送(C)テレビ朝日