小芝風花&亀梨和也の令和版「大奥」が“シリーズで最も切ない”と言われるワケ、失われる絆と培われる絆の物語

2024/08/27 12:00 配信

ドラマ コラム

小芝風花&亀梨和也の令和版「大奥」が“シリーズで最も切ない”と言われるワケ(C)2024フジテレビジョン (C)東映

2024年1月から3月にかけて全11話が放送された令和版ドラマ「大奥」。連続ドラマとしてはおよそ20年ぶりの人気タイトル再始動、そして主演の小芝風花亀梨和也をはじめとした豪華俳優陣たちの出演で大きく話題を集めた。女の園で繰り広げられる愛憎と静かに育まれる絆、時代に翻弄される人々の人間ドラマは令和の時代にあってもなお新鮮だ。8月28日(水)にはBlu-ray&DVD BOXが発売される同作の魅力を、いま改めて振り返る。

名女優が輝かせてきた「大奥」の歴史


フジテレビドラマ「大奥」は、2003年から続くフジテレビの人気ドラマシリーズ。菅野美穂、浅野ゆう子、松下由樹、高島礼子、瀬戸朝香、仲間由紀恵などそうそうたる顔ぶれが豪華絢爛な衣装とセットで華やかに「大奥」の人間模様を熱演した。

舞台は嫉妬と欲望が渦巻く動乱の「大奥」。大奥とは江戸城内にあった将軍の妻子と、身辺の世話をする女性たちの居所だ。男子禁制であることから“女の園”と呼ばれる大奥は徳川第2代将軍・秀忠が「大奥法度」を制定して以来、15代将軍慶喜まで約260年続く。

令和版「大奥」では、過去作からさらに時間が進んだ10代将軍・徳川家治の治世が舞台。家治と政略結婚した皇族の娘・五十宮倫子が、女たちの愛憎渦巻く大奥で生き抜いていく物語が描かれる。

主人公である倫子を演じるのは、フジテレビ制作のドラマ初主演となる小芝風花。第10代将軍・家治を時代劇初挑戦の亀梨和也が演じるほか、西野七瀬森川葵宮舘涼太など過去作に負けず劣らずの豪華な顔ぶれが共演を果たした。さらに大奥総取締役の“松島の局”を栗山千明、物語のキーマンとなる田沼意次役は安田顕が演じるなど、個性あふれるキャスト陣が集結。

「大奥」といえばまず外せない要素として語られる、豪華で荘厳な衣装やセットはもちろん健在。全編オール京都ロケとなった今作は、仕草から着付けに至るまでこだわりにこだわり抜かれている。毎朝2時間以上もかけておこなわれたというメイクだけでなく、大奥という環境に相応しくシーンごとに変わる華やかな着物は溜息が出るほどの美しさだ。

そんな伝統と格式ある「大奥」だが、令和版では特に「切ない恋」にフォーカスが当たった。「“愛”をテーマにした『大奥』史上、最も切なくて美しいラブストーリー」という言葉で紹介されるに相応しく、複雑な恋愛模様が描かれる。

「最も切なくて美しい」大奥の新しい“風”


時は江戸中期。景気は悪化の一途をたどり、国民は質素倹約・勤労の日々を強いられていた。そんななか、東山天皇の皇子・閑院宮直仁親王の娘で皇室の血を引く公家の娘・五十宮倫子(小芝)は第10代将軍・徳川家治(亀梨)との政略結婚を強いられることに。京から江戸城本丸の裏にある大奥へ渡ると、そこには1000人近くにもおよぶ女性たちが将軍に平伏する異様な光景が広がっていた。

一方、父である第9代将軍・徳川家重が謎の死を遂げたことで第10代将軍の座に就いた家治。幼い頃から聡明で、祖父の第8代将軍・徳川吉宗からも目をかけられていた逸材だ。家治は苦境に陥る幕府を立て直したいと考えて行動に移すが、側用人・田沼意次(安田顕)にある秘密を握られてしまう。

愛におびえ、愛を知らず、数奇な運命に翻弄されながらも懸命に生きる将軍・家治。そして想い人を京都に残したまま、政略結婚の道具とされた倫子。2人が出会い、大奥に渦巻く権謀術数へ巻き込まれていく。

同作の見どころの1つが、女たちの立場の目まぐるしい変化。西野七瀬が演じるお品は倫子の付き人で、京の宮家の姫である倫子に誠心誠意仕えていた。倫子が家治と政略結婚するにあたって倫子とともに江戸城に入ったお品だが、権力を握ろうとする者たちの手によって“家治の側室”という立場に立たされることに。

味方だったはずの者が敵に、はたまた敵だったはずの者が味方になる目まぐるしい展開。それぞれの立場と心情をしっかり描き、複雑な人間関係に宿った愛憎を表現した脚本は見事というほかない。