小芝風花&亀梨和也の令和版「大奥」が“シリーズで最も切ない”と言われるワケ、失われる絆と培われる絆の物語

2024/08/27 12:00 配信

ドラマ コラム

登場人物全員が確かな存在感を放つ令和版「大奥」


令和版「大奥」における大きな特徴として、“失われるもの”の多さが目立つ。医療の発達も未熟な江戸の時代、将軍や世継ぎの死を描く回はこれまでの「大奥」シリーズでも描かれていた。しかし今回は、ある人物の陰謀によって命を絶たれる者たちが数多く登場するのだ。

そしてそこに付随して輝くのが、俳優陣の演技力。自分の子が息を引き取ったときに挙げる女優陣の悲嘆はもとより、自らの派閥ではない世継ぎがなくなったと聞いた各人の演技はひとかたならぬものだ。

たとえば安田顕が演じる田沼意次は貧乏旗本の出身ながら破竹の勢いで出世を果たし、小姓から将軍の側近である側用人…さらには幕政のトップである老中の地位にまで上り詰めた男。

上昇志向の塊で権謀術数に長けた政治家であり、大奥総取締である松島の局(栗山千明)と結託して幕府を思いのままにしようとする明確な悪役ポジションだ。しかしそんな田沼も、意外な訃報に接してはわずかな反応を見せる。驚きと憐憫が入り交じった微妙な表情の変化、それでいて口からこぼれるのは立場を有利にするための冷静沈着な言葉…まさに政治家という彼の性格を表すシーンといえるだろう。

それを成し遂げるのは、わずかな心の機微を目の動きや表情で表現する演技力にほかならない。こうした思わず舌を巻くような名演が、そこかしこで見られるのが豪華俳優陣の集った「大奥」の醍醐味だ。

愛と憎、離別と消えない絆…表裏一体の心を描く「大奥」


ドラマを通じて、「愛のない結婚」「側室」など現代人にとって想像しづらい男女関係が当たり前のように描かれる大奥。一人の天下人の寵愛を受けるべく、女たちにより繰り広げられる熾烈な戦いはまさに地獄絵図といえる。

だがそれだけに、作中でわずかに垣間見える登場人物たちの優しさは、観る者の心の深くまで染み込んでいくように思う。現代とは違う価値観、舞台設定の特殊さを差し引いても、人間の愛や絆、嫉妬や憎しみといった感情は多くの人の共感を呼ぶのだ。

絢爛豪華にしてドロドロの愛憎劇が繰り広げられる「大奥」は、8月28日(水)にBlu-ray&DVD BOXが発売される。同商品には未公開シーンを追加した本編のディレクターズ・カット版のほか、特典映像としてメイキングや松平定信を演じた宮舘涼太主演のスピンオフドラマ「大奥~定信の恋~」が収録されるという。

一度目は主人公たちの目線で、二度目は敵役の目線で、三度目は黒幕の目線で…。何度見ても発見のあるドラマ「大奥」、ぜひ今後とも新章の登場に期待したい。