『虎に翼』脚本・吉田恵里香「本当に恵まれた現場だった」“自分の人生を自分で決めること”を描いた作品に

「虎に翼」より(C)NHK

花江はもう一人の主人公です


――作品を通して、花江(森田望智)という存在もとても大きく感じます。花江に託した思いなどがあれば教えてください。

花江はこの作品のもう一人の主人公だと思っているんです。“朝ドラ”の中で何かを成し遂げた男性の妻がヒロインという構図があると思うんですが、それにもなり得る人だなと思っていました。花江の朝ドラがあってもおかしくないように、自分の中では書いたつもりでいます。花江は社会に出たい、働きたいという気持ちは一切なく、家庭に入って家族を支えて家族のために生きることに幸せを感じている人なんですよね。それは一貫して最初から最後までそうでした。

社会構造的にバリバリ働く人のためには誰かケアする人がいなきゃいけない構図にどうしてもなっていて、その改善策を私の中でもまだ見つけられていないんですが、間違いなくその人がいなかったらバリバリ働けないっていう構図になる。二人三脚になっていると思うんですが、言葉は良くないですが何となく支える側が世の中の人に二軍扱いされちゃうことがすごく腹が立つなと思っていて。

お互いに支え合って、どれだけ家庭を円満にするかということが大事であり、大変なことですよね。家庭のことだから家族みんなで支え合う必要がある。終盤での同居のことも含めて、花江を取り巻くさまざまな考えが見えてくるというふうにしたつもりです。

――女性の社会進出を描くにあたり、仕事だけでなく家庭も含め、人間関係を多角的に描かれている印象がありました。描く際に意識されていたことはありますか?

今回、人権や“自分の人生を自分で決める”ということをテーマに書いてきました。でもそれはやはり寅子だけでは描き切れない部分が多かったので、女子部のみんなは最後まで出演させようと最初から決めていましたし、見てくださっている方にも女子部メンバーがとても愛される存在になったことはすごくうれしかったです。

描き方に関しては、自分自身が働いているので、働いている側に立ってしまうと視野が狭くなってしまうんです。その部分は気をつけていましたね。人が心からなりたいものになれたらいいなと思っていて、バリバリ働きたい人、程よく働きたい人、家庭に入って家族を支えたい人…“ここで自分を発揮する”ということを心から望んだところにいけることが本当の一番だと思っています。そうなるためにはどうしたらいいかと考えた時に、専業主婦の花江をはじめ、すべてのところから書かないとフェアじゃないなと思っていたのでそこは配分としてすごく気を付けました。

寅子だけが正しくはないし間違えるし。誰もが間違えてしまうところはありますし、美化しすぎないということはすべてのキャラクターに関して気を付けたかなと思います。

――見ている方からすると、感情移入する人が誰かしらいるような気がしました。

そうですね、そうなったらとてもうれしくて。この人のこと嫌いだな、とかあってもいいなと思っているんです。誰かに寄り添うと、誰かの見えていなかった目線が見えてきたりするので、そういう体験を作れたらいいなと思って書いてきました。

想像以上なのは小橋です(笑)


――吉田さんが書かれた想像以上のキャラクターはいますか?

小橋(名村辰)がすごい愛されてるなと思いました(笑)。私もこんなに最後まで登場するのか、とは思ったんですが、現場でも役者さんの力もあり愛されていて。第10週から家裁での新メンバーを登場させるときに、新しい人じゃない方がいいなとは思っていたんですけど、そこで小橋と稲垣(松川尚瑠輝)をとなった時点で彼らが愛されていたということだと思うので。私も書きたいと思いましたし、そういう意味でも一番想像以上なのは小橋ですね(笑)。

また、轟も私はすごく好きなキャラクターではあるんですが、ここまで皆さんに愛されるとは思っていなかったので意外でした。轟はすごく難しいキャラクターとして最初から出てきて書いてきたので、彼がこんなにも愛されることになったのは戸塚さんの力ももちろんあり、本当にうれしいなと思っています。