――西園寺さんを松本さんにお任せしてよかったと感じた瞬間は?
実は、西園寺さんはとても難しい役なんです。なかなかいない強烈な個性を持ったキャラクターだけど、どこか身近にいるような感じがする人にしたかった。そのためにはファンタジーすぎる人物になってはいけなかったし、かといってリアルに無難に描くと普通の人になってしまう。
若菜さんとは、クランクイン前からいろいろ話をしながら西園寺さんを作っていったのですが、若菜さんご自身が持つユーモラスな言葉や表情、圧倒的に明るく華やかな空気と親しみやすさで、本当にすてきに肉づけしてくださった。
そして、なにより、そのお芝居の力で、単に明るいだけのキャラクターではない、西園寺さんが内包する入り組んだ複雑な思いをとても丁寧に解いてお芝居に落とし込んでくれて、言葉にならない感情さえもそのまま伝わるように演じてくださった。
そのおかげで、西園寺さんが立体的に浮き上がって、皆さんに愛されるキャラクターになったんだなと思います。そこには理想以上の西園寺さんがいました。
次はどんなお芝居を見せてくれるんだろう、どんな表情をするんだろう、といつもワクワクさせてもらって、そのたびに「若菜さんにお任せして良かった」と思っていました。その若菜さん発のワクワクが現場を牽引してくれていたと思っています。
――現場での松本さんはどのような様子でしたか?
西園寺さんと若菜さんって、共通項が多い人なのかもしれないと思っていて。若菜さんがいるだけで現場は明るくなるし、カラッとしていながらもいつもさりげなくいろんなことに気をかけてくださる。西園寺さんは台詞も多いし、主人公なのでやはりどうしたって出ずっぱりになります。
とても大変だったと思うのですが、いつも穏やかで明るくて、ポジティブな空気を醸し出してくださっていました。現場のワクワクする空気は若菜さんが作ってくれていたと思いますし、そのお芝居の力でいつも現場のモチベーションを上げてくれていたことに感謝しています。
俳優さんとしてもずっと好きなかたではありましたが、人間力も本当に本当に魅力的で。この数か月一緒に過ごして、ますます大好きになりました。
――複雑な役どころを演じた松村さんのお芝居はいかがでしたか?
松村さんのお芝居の繊細さには圧倒されました。演じているように見えないというか、お芝居に見えない瞬間があるんです。「楠見俊直」という人がここにいる、という感覚になるというか。
第1話や前半のまだ心にシャッターがある状態の楠見の頑なで張り詰めた空気感、中盤の西園寺さんや周りの人に心を開いて柔らかくなった変化、そして後半に西園寺さんと過ごした日々の影響の大きさを感じさせるような新しい表情や感情…それまでまとっていた鎧が少しずつ剥がれ落ちていく楠見の変化を、驚くほど丁寧に繊細に積み上げてくださって。
楠見が変わっていく様、そして感情が大きく動いていることが見えるお芝居には、いつも心が揺さぶられました。かと思えば、コミカルな表情や動きをさらっと見せて笑わせてくれたり! でもそのコミカルさの塩梅や差し込み方もとても緻密なんですよね。
彼のお芝居の奥行き、丁寧さ、繊細さには本当に驚かされました。こんなに近くでそのお芝居を拝見できて私もとても勉強になりましたし、このお芝居に見合う良いドラマにしなければと身が引き締まりました。
──ルカ役の倉田瑛茉ちゃんとの仲睦まじい様子も話題でしたね。
本作にとってすごく大事な存在のルカの魅力を最大限に引き出してくれたのは松村さんの力が大きかったと思います。本当の親子のように瑛茉ちゃんに寄り添って、彼女をリラックスさせてナチュラルにいさせてくれたから、ルカという魅力的なキャラクターが輝いた。
そういう面でも松村さんにはとても感謝しています。現場では、2人で一緒に笑ってる声がずっと聞こえてきて、その声を聞くと皆幸せな気持ちになれました。
──育児描写の細やかさは、岩崎さんご自身の経験も生きていますか?
そうですね、日々育児と仕事でバタバタなので、このドタバタな出来事やあるあるをドラマに盛り込んで生かそう!と思っていました。
私もそうですが、脚本家チームも含め、子育て中のスタッフがとても多い制作現場で。みんなで「こういうのあるあるだよね!」「子どもってこういうこと言うよね!」「こういうときこうしてもらえたら救われるよね」とか、さまざまな意見を出し合うことができ、リアルな育児事情が反映されたのかもしれないですね。だから、「育児描写がリアル」と思ってもらえるのはうれしいです。
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