にっちもさっちもいかない人間。一縷の望みを信じてあきらめない人間。ポン・ジュノ監督の作品は徹底して人間を描こうとしている。残酷なまでに。
ポン・ジュノ監督の作品を好きにならずにいるのは難しい。きもち悪いのに、楽しい。恐ろしいのに、おもしろい。常に、描かれるのは不遇な人々だ。貧困や暴力や格差、そしてそこに渦巻く執着や絶望。展開は残酷だし、血生臭い。
にもかかわらず、ポン監督の映画は好もしい。それは奇跡のようなもので、なぜそのように描ける人と、描けない人がいるのか、私には解析できない。混沌とした社会と人間の暗部を描くことから、ポン監督は逃れられないだろう。
それは、重く、複雑な成り立ちの韓国という国に育ち、その変化を目の当たりにしてきた監督自身の宿痾のようなものでもある。
しかしポンさんはきっと心に決めている。誰一人置いてけぼりにしない。絶対に映画の最後まで連れて行くんだと。その観客に対する厚い親愛。それこそが彼の天賦のものだし、憧れても、憧れてもまた遠ざかる眩しい背中だ。
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