何度でも復讐できるプログラム=ペナルティループ。若葉演じる岩森淳が、最愛の恋人・砂原唯(山下リオ)を殺めた犯人・溝口登(伊勢谷友介)への復讐殺人を何度も繰り返していく模様を描く。
朝6時に目覚めると、時計からいつもの声が聞こえてくる。日付は6月6日。岩森は身支度をして家を出て、唯を殺めた溝口を殺害し、疲労困憊で眠りにつく。翌朝目覚めると周囲の様子は昨日のままで、溝口もなぜか生きている。そしてまた6月6日である今日も、岩森は恋人の仇討ちを繰り返す。その復讐ループの中で岩森の心境が徐々に変化していく。
非現実的な世界のはずなのに、どこか現実の延長、近未来だと思わせる本作。浮かばれない情念を抱える被害者側の遺族や恋人らのための救済プログラム。被害者側が加害者側になる。ないはずの世界なのに、あるように思えてしまう。
同じようなシーンの繰り返しで、登場人物も少ない。だが、飽きさせない。若葉×山下、そして若葉×伊勢谷のどこか違和感があるが、どこまでもナチュラルな芝居は癖になる。同時に、アンビバレントなこの世界観をより一層引き立てている。
それぞれの作品の世界で生活する若葉だが、役柄に引きずられることはないという。「僕は“仕事は仕事”という考え方の人なので、そこでメンタルをやられて、ほかの仕事に悪影響を与えるとか、プライベートまで崩してしまうということは決してないんです。一個一個、スイッチを切り替えてやっているので、そこは大丈夫です」(引用:若葉竜也が華麗なる転身を振り返るチビ玉から演技派俳優への軌跡とは)と過去のインタビューで語っていた。
スイッチの切り替えがはっきりしているからこそ、さまざまな作品世界で違う人物として生きられるのかもしれない。“パチンッ”とスイッチ一つですべてが変わる若葉。そんな「若葉竜也の佇まい」をこの特集を通して追うことで、あなたも生きたことがない人生とそこで生じる味わったことがない感情を体験することができるかもしれない。
構成・文=戸塚安友奈
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