織田裕二“司馬”が「お大事に」…医師同士で大病を宣告することの難しさ<振り返れば奴がいる>

2024/09/26 17:30 配信

ドラマ レビュー

一見、冷酷な司馬の本音とは


続く第8話で、石川は中川から正式にガンを宣告され、最優先で手術することが決まる。その前に、外科部総出の体外肝切除という大手術が行われ、石川もこれに参加した。そのころ、中川は部長室で険しい表情。右手が震えるのだった。その震えが原因で手術ミスをした時、司馬にそのミスをなすりつけていた過去があり、それ以来、中川は司馬に負い目があった。

ストーリーもここまで進んでくると、司馬がただ単に冷酷な男なわけではなかったことが視聴者にも分かってくる。過去から続く中川との関係や患者の命や尊厳を考えた結果、生半可な優しさを他人に与えることをしないでいるだけだろう。

最大のライバルである石川に大病が見つかったことで、司馬の医師としての信念がハッキリと分かる。告知を避けようとする他の医師とは違い、司馬は石川本人に知らせるべきだと主張し、医者なら患部が写ったレントゲン写真を見れば病気の進行具合を分かるだろうと「おまえのだ!」「お大事に」と言い残して真実を伝えた。

長時間の手術に挑む石川に「いつ血を吐くかわからない人間がオペ室にいたら皆迷惑なんだよ」と、司馬は一見ひどい発言をするが、石川の病状を思ってのこと。他人から見える言動だけがその人の本心ではなく、別のところにも確固たる意思があるのだということを伝える深みのある作品である。