文芸作家としても活動するNMB48の安部若菜の2冊目の小説『私の居場所はここじゃない』が12月6日(金)に発売することが決定した。安部の1作目の小説『アイドル失格』は全12話で実写ドラマされ、「コンプティーク」でコミカライズも進行中。第2作『私の居場所はここじゃない』発売までの期間、NMB48の主力メンバーとして活動する傍ら小説執筆にも精力的に挑戦する安部若菜の作家としての努力やアイドル活動との両立について綴るエッセイをお送りする。第5回は10月9日発売のNMB48の新シングル「がんばらぬわい」から感じ、考えたことを綴ります。
早くも10月が後半に差し掛かり、2024年も残りわずか、という空気も出てきましたが、未だに暑い日が続いていて10月らしさが感じられません。
NMB48は毎年10月に周年コンサートを開催しているので、私はかろうじて季節感を保つことが出来ていますが、それでもこの10月も数年前とはすっかり変わってしまったなという感じがします。
変わってしまったといえば、NMB48も毎年大きく変わっていっています。メンバーが入れ替わる大人数グループには卒業が付きものですが、もうNMB48が発足した14年前から残っているメンバーは誰もいなくなっています。
私が加入したのは7年前ですが、数えてみればこの7年で70人以上の卒業を見送っていました。NMB48のファンにとっても、NMB48に詳しくない方にとってもかなり大きく感じる数字なのではないでしょうか。
そんなNMB48は、10月9日に30枚目シングル「がんばらぬわい」を発売しました。がんばらぬわい≒がんばらない、という意味の造語です。
15年目のNMB48、頑張っていくぞ!というタイミングでの「頑張ったって意味ないよ」という歌詞に初めこそ戸惑いもありましたが、何度も聴いていると癖になる”後ろ向き応援ソング”のように感じます。
「頑張れ!気合いだ!」なんて時代でもなくなってきた現代にもピッタリな曲なような気もしています。
2番の歌詞には『一生懸命やったってしょうがないよ どうせ結果は同じさ』とあり、流石に歌ってる側には若干の抵抗をする気持ちもあるのですが、確かにそうだよなぁ…と思ってしまう日もあります。
「どうせ無理だ」「しょうがない」「これは仕方ない」そうやって自分に言い聞かせる日は、誰にだってあるんじゃないでしょうか。
自分にはどうにも出来ないことに包まれた時、そう思うことが唯一の解決策であり、自分を守る手段で、そう思わなきゃやってられないことが世の中には多すぎるのかもしれません。
次作の小説『私の居場所はここじゃない』の登場人物、森冬真もそんな「仕方ない」環境の中で生きる1人です。家庭環境や金銭面、友人との関係に対し「こんな環境じゃなければ俺だってもっと……」と歯痒い思いをします。
夢を目指しているのに思い通りにいかないことは、自分の実力不足なのか、環境のせいなのか。高校生にとってその判断はあまりに険しいものです。
そんな時によく聞く名言である “置かれた場所で咲きなさい”
本当にそうなんでしょうか?置かれた場所が合わない場所だったら、無理にそこで過ごすことで咲かせられるはずだった花を枯らせてしまうかもしれない。
でも合わない場所だと見切りをつけて環境を変えてみても、本当は前いた場所が咲ける場所だったかもしれない。
咲けない理由が自分にあるのか、環境にあるのかは誰にも分かりません。正解の選択肢も無い。そんな曖昧な世界なのに、この言葉のように自分にばかり責任を求めていたら、いつか潰れてしまいます。
もちろん責任転嫁ばかりしていて咲ける訳もありません。でも、たまには環境のせいにしてもいい。そんなゆとりが許される世界であってほしいと切に願っています。
そんなゆとりを許してくれる曲が、この「がんばらぬわい」なのかもしれません。がんばらないと決めた時に、他の居場所があることが何よりの幸せなんじゃないか、とも時に思います。
ささやかな趣味でも、読書でも。何か別の安らげる居場所がありますように。
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