「抜け駆けしやがって!」
夏帆はそういたずらっぽく仲野太賀をイジった。2019年に芸名を太賀の2文字から名字を加えた仲野太賀に改名したからだ。そもそも「太賀」という芸名は、事務所が二世俳優と思われることを避けるために配慮してつけた名前だった。けれど彼自身は「恥ずかしいな、逆に二世俳優っぽいわー」と思っていたそう(「ボクらの時代」2019年10月27日フジテレビ系)。
大人になるにつれ名字がほしいという思いが大きくなり「今日から俺は!!」(2018年日本テレビ系)で広い層に知名度が広がったのを機に名字をつけたのだ。いまや、彼を二世俳優の枠で語るものはいないだろう。クセのあるキャラクターからごく普通の役まで巧みに演じ、いずれの場合も見た後、妙に印象に残ってしまう。いわば、“余韻”を生む俳優だ。
もともと小学生の時に見たドラマ「WATER BOYS」(2003年フジテレビ系)に感動したことがきっかけで役者を志した。最初に参加したオーディション会場の扉を開けると、目の前には、その直前にドラマで見て印象に残っていた少年がいた。それが染谷将太だった。染谷は同学年。それから度々、オーディション等で顔を合わせるようになり、学園ドラマ「生徒諸君!」(2007年テレビ朝日系)で共演を果たし急速に親交を深めた。
高校進学を控えていた仲野と染谷は、「高校一緒のところ行く?」と話し合い同じ高校に入学。クラスメイトとなった。入学式の後には、互いの母親を交えてランチに行くほどの仲。連日のように一緒に遊び、帰宅後も長電話、互いの自宅に泊まったことも少なくないほどの「親友」だった。だが、この頃から急速に染谷は注目されるようになっていった。
2009年には「パンドラの匣」で長編映画初主演を果たし、高い評価を得て、映画に愛されていくようになった。もちろん、親友が評価されるのは嬉しい。だが、同時に「唇が噛みちぎれるくらい悔しかった」(「だれかtoなかい」2024年8月25日フジテレビ系)という。感情はグチャグチャになった。その頃に出会い、やはり同学年で仲が良くなった菅田将暉も瞬く間に売れていった。