「ひよっこ」最終回、最後のせりふは『頑張っぺ!』

2017/09/30 11:30 配信

ドラマ

「ひよっこ」の軌跡


張り詰めた空気のスタジオで、最終シーンのカットが掛かると、有村は使い込まれたタオルを握り締め、チェック用モニターの前に立った。

本作がオールクランクアップを迎えたのは9月4日。制作発表会見から数えると、1年2カ月に及んだ有村の“朝ドラ”ヒロイン生活が、ようやく幕を閉じた瞬間だった。

みね子の結婚相手・秀俊役の磯村勇斗も感極まった様子撮影=龍田浩之


有村にとって、“朝ドラ”は「あまちゃん」(2013年)以来、2度目の出演。だが、今回はオーディションではなく、脚本の岡田惠和による熱烈なラブコールに応える形でつかんだ、ヒロインの座だった。

「皆さまに新しい風を吹かせていけたら」と意気込み、向かった茨城。この時、有村はあえて体重を5kg増やしていた。「農家で暮らす子に見えるように」──。体重には人一倍気を使っているであろう女優が、プロの根性を見せた。

ところが、4月3日に放送された初回の視聴率は19.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区。以下同じ)。20%を割ったことで、ネット上では厳しい意見も相次いだ。

しかし、視聴者の多くは、数字なんて関係ないとばかりに連日感動の渦に包まれていた。有村演じるみね子が、初めて自分の給料でビーフコロッケを食べる。たったそれだけのシーンなのに、泣けて泣けて仕方がない…。

5月13日の第36回より。みね子は初任給を持って、すずふり亭を訪れた(C)NHK


そんな不思議な現象を起こしたのは、岡田の脚本と有村の演技力の共鳴の賜物なのだろう。熱い支持はやがて視聴率にも表れ始め、先の“ビーコロ”シーンが放送された5月13日の第36回では、20.9%。その後もじわじわと数字を伸ばし続け、9月28日放送の第154回では本作最高の24.4%を記録した。

モニターには、撮ったばかりの最終シーンに続けて、これまでのダイジェスト映像が流された。それを見る有村の目からは、大粒の涙があふれる。

共にクランクアップを迎えた磯村に加え、沢村や木村佳乃ら、駆け付けた12人の共演者陣に囲まれ、有村は何度も涙を拭った。

すると、コメントを求められた沢村は突然、有村の頬を両手で“ムギュッ”。東京へ行く実がみね子にしたしぐさで、その後も本編で度々登場していたのだが、最後の最後にもう一度というわけだ。有村は驚きと照れで、この日一番の笑顔を見せていた。

【写真を見る】沢村一樹が有村架純のほっぺを“ムギュッ”!撮影=龍田浩之


「谷田部みね子として『ひよっこ』という世界で過ごせたことは、私の宝物です。みんなのことが大好きです!」。“ぽっちゃり”していたみね子はいつの間にか、有村と共にスマートで芯の通った女性になっていた。

たった4年間の物語の中で、みね子は大成するわけでも、大きな目標を達成するわけでもない。そんな異例の“朝ドラ”となった本作は、「新しい風を吹かせていけたら」という、有村の言葉の通りになったと言えるだろう。

「登場人物たちの続きが気になります」と話す有村の希望も、かなえられるだろうか?

なお、同番組の総集編は10月9日(月・祝)昼3時5分から、前後編続けて173分にわたって放送される。

藤野涼子、松本穂香、泉澤祐希、佐久間由衣、磯村勇斗、やついいちろう、古舘佑太郎(上段左から)、高橋來、峯田和伸、沢村一樹、有村架純、木村佳乃、佐々木蔵之介、宮原和(下段左から)撮影=龍田浩之

関連番組