桜井ユキが高橋一生と作り上げた“リミスリ”の世界

2017/10/17 06:30 配信

映画 インタビュー

フラットな状態で生まれた空気感


高橋の醸し出す雰囲気が、幻想的な空間を描く作品の中で映える(C)2017 KingRecords


――高橋さんと二人で作り上げる雰囲気は印象的でした。

お互いに撮影中は、役についてとか、「次のシーンはこうだから」といった話をしていなかったんです。それを撮影が終わって高橋さんとお話をしていて気が付きました。

現場でもお互いに比較的フラットな状態でいて、切り替えるということもなくすっと入っていくという感じで。だからこそ生まれた二人のシーンの空気感があると思いますし、演じている時も高橋さんの出してくださる雰囲気が心地良かったです。

――高橋さんとは初共演ですか?

ドラマでご一緒したことがあるのですが、出演シーンが違ったので、お会いしてなかったんです。ちゃんと一緒にお芝居をさせていただいたのは今回が初めてです。

――どんな方でしたか?

お会いするまでは、すごくまじめで聡明なイメージでした。実際は、とてもユニークで、いろいろなことを知っていて、撮影現場でも監督とよくそういうお話を聞いたりしていました。奥行きのある、とても深い方だなっていう印象です。そしてどこか少年っぽさも感じます。

――刺激を受けた部分もあったのでは?

このタイミングでこうしてとか、頭で計算しないでお芝居をするってなかなかないと思うんですよ。でも高橋さんは、それをとうに済ませて遠くのかなたに置いておいた状態で、お芝居で会話をすっとされる方でした。一緒にお芝居をさせていただいて、初めて得た感覚でしたね。

――演じる中で高橋さんが引っ張ってくれたところもあったと。

それはあると思います。お互いに打ち合わせをしたわけでもないのに、自然とその場で生まれて結果こうなったねというシーンが結構あったので、高橋さんがそういう雰囲気をお持ちなんですかね。

ラブシーンでは高橋一生に「思わずポロっと」


「人前で肌を露出するという部分では、比較的フラットな状態でいられた」と語る


――初挑戦のラブシーンは緊張されたのでは?

人前で肌を露出するという部分では、撮影までは特に身構えるという感覚はなく、比較的フラットな状態でいられたんです。でも、そのシーンになってスタートがかかる直前に、すごく心臓がバクバクしたんですよ。「あ、私たぶん緊張しているな」と思って、その時に高橋さんに言っちゃったんです。思わずポロっと。高橋さんは「そうだよね、大丈夫だよ」とさらっと言ってくれて。そのままスタートしました。

そこからは、周りのカメラは気にならなかったですし、自然体でその場で生まれたものを構築していく感じでした。そのシーンは映像で見ても良かったと思いましたし、(高橋さんが)受け止めてくださったので、伝えて良かったなって思いました。高橋さんに感謝すべきところですね。

――高橋さんに緊張を伝えたことで変わったんですか?

「緊張している」と言ったことへの安堵というか、自分が言った一言にも、受け止めてくださった高橋さんの一言にも救われました。繊細なシーンではあるので、気にすることなく自然体で演技ができたというのは、お相手が高橋さんだったというのも大きいですし、幻想的な空間によるものも大きいと思います。

アキは現実と妄想の間で苦悩する(C)2017 KingRecords


――屋上のシーンでしたね。

屋上のシーンは、照明も含め美術の一つ一つが、幻想的な空間を作っていました。周りには夜景が広がっていて、そんな日常と離れた空間だったからできたというのもあると思いますね。建物の中の一室ではなく、どこか異空間な場所だったことが、あの世界観を表現できたのだと思います。

――確かに屋上は印象的なシーンでした。

美術品一つ一つの色彩や電飾の色彩までもが幻想的でした。撮影前にセットが完成した屋上に足を踏み入れた瞬間に鳥肌が立ちました。「ここでアキとカイトが生活していたんだよ」って、横で監督が説明してくれて、私はただただ「何てすてきな空間なんだろう」って思って見ていました。

屋上は、カイトとの幸せな時間もそうなんですけど、カイトが去ってしまった後にアキが一人で過ごした空間でもあるんですね。そこはアキにとって大切な場所であり、いろいろなものが詰まっている場所でもあるので、思い入れがあります。私にとっても屋上が一番好きなシーンです。