別日には大泉と堤のアクションシーンの撮影も行われた。堤が身に着けていた衣装は本物の鉄が使用されており、かなりの重量とのこと。その衣装で行ったアクションシーンを堤は「撮影が進むごとに立ち回りがどんどん増えていきますし、それで腰を痛めて、京都にいる間は整体とかマッサージをずっとやっていましたよね(笑)。」と満身創痍だった様子。
しかし、大泉演じる兵衛と対面すると、1ミリもそんな素振りを見せず刀を振り、「スピード感のある殺陣というよりは、大きく見せることだけを大事にしていました。でも、『速く』となると手だけになっちゃうので、それだけは避けて、大きく、大きくということを意識しました。太刀筋がきれいに行くように、波を打たないように。速くやっていると波を打ってしまうんですよ。そうならないように重い感じで刀を振る。大きく、大きくメリハリのある動きを意識していました。」と、見せ方までも気にかけ、圧巻のアクションシーンを完成させていた。
一方、大泉は刀を2本構えた二刀流で堤演じる道賢に立ち向かっていく。過酷なアクションシーンに「身体的には本当にきつかったですけれど、兵衛という役をやるには、今の僕ぐらいの年になって出る味わいというか雰囲気が必要だったんだなと今となっては思っています。」と、兵衛に対してのリスペクトがあふれるようなコメントを残した。
さらに、息をのむような堤との一騎打ちのシーンは「やっぱり堤さんは、アクションにも慣れてらっしゃいますから、ちょっとしたシーンが本当にかっこよくて。兵衛のもとへ数人斬ってからやってくるというシーンがあったのですが、俺、この人とこの後に一対一で戦うんだ、どうしよう…みたいなね(笑)。がむしゃらにくらいついていきました。」と、振り返る。
そんな大泉は、1つ1つの動きをアクション部の方に聞いている様子が印象的だった。刀の位置、振り下ろし方、速度などを丁寧に確認し本番に臨む。そして、本番を終えると、持ち前のトーク力でエキストラや共演者を笑顔し、座長として現場の雰囲気作りをこなしていた。
――まずは「室町無頼」の企画経緯をお聞かせください。
須藤:企画自体は8年ぐらい前に立ち上がり、すぐに主役を大泉さんにお願いして動き出したのですが、ようやく映画が撮れるという準備ができた段階で、コロナ禍になったんです。
堤さんもその段階で決まっていて、大泉さんと堤さんがある現場でお会いした時に、「どうしてもこの作品は面白いからやりたいよね」って言ってくださり、スケジュールをあわせてようやく撮影に取り掛かれました。企画意図としては、時代劇という枠から離れて、エンターテインメントのアクションの映画として楽しめるというものを作りたいなというのが大きかったです。
入江:アクションもですが、 名もなき人々が世の中に不満を持って立ち上がるというのが、この7、8年の世界ともリンクするところがあるなと思います。怒るとか不満をぶつけるというのが、今は難しい世の中なのですが、この映画が1つの指針じゃないですけど、「こういう生き方もあるよ」といったことを感じてもらえたらいいなと。
――現場での大泉さんはいかがでしたか?
入江:すごい弱音を吐いていました(笑)。「アクションが多い」とかね(笑)。
須藤:「最終的にやるんですけど、もう50歳ですから、 とりあえず体と相談してやらないと、最終的にみんな皆さんに迷惑をかけてしまうんで、今日はここまででいいですか」と言っていました(笑)。
入江:でもやっぱり、仕上げてくると、すごい殺陣になっているんです。もう何カ月も練習して、刀も多分ご自宅でも振ってこられていたので、かなり見応えがあります。