井上ひさしの名作「シャンハイムーン」が、野村萬斎、広末涼子ら6人の俳優によって上演。第27回谷崎潤一郎賞を受賞した本作は、日本を憎みながらも日本人を愛した中国人作家・魯迅と、彼を敬い匿った日本人たちの、1934年のある1ヵ月をとらえた緻密なセリフ劇。中国近代文学の祖・魯迅に扮する野村と、その“第二夫人”を演じる広末に、作品に挑む想いを語ってもらった。
野村萬斎「日本と中国という国同士の複雑な関係、そしてそれを超えた人間同士の友情や愛情を抱腹絶倒なシーンをとりまぜながらも、そこから本質をあぶりだしている緻密に描かれた素敵な作品だなと思いました。僕が演じる魯迅は、日本を憎みながらも日本人を愛した中国人で、彼を敬愛してかくまってくれる日本人たちの中で過ごすんです。周囲の人が危険を顧みずに魯迅を守る。魯迅は、それだけ尊敬され、愛される “一種のカリスマ”でいなければならないと思います。」
萬斎「今だったら週刊誌の格好のネタになりそうな関係ですからね(笑)」
広末涼子「そうですよね(笑)。冒頭からしばらくの魯迅と広平は理想的な夫婦の距離感というか、お互いに尊敬し、愛し合う関係だと思うんです。でも、もう1人の妻の存在が見えてきたところからそれがどう変化するか…。いざ舞台に立ったとき、どういう感情が湧き上がるか楽しみですし、それがどんな方向に振り切ったとしても、お客さんに共感してもらえたり、しっかり受け止めてもらえるお芝居にしたいです」
広末「怖いと感じることはないですね。自分が失敗しないかどうか…だけです(笑)。昔の話なんですけど、私、一度ゲネプロのときにすごい失敗をしたんです。緊張のあまり着替えが間に合わなくて…。それですごく落ち込んで帰ったら、母に『それだけ失敗したなら、それ以上の失敗はないわよ』って言われて」
萬斎「あはははは」
広末「私のポジティブさはここから来てるんだなぁと思ったんですけど(笑)、当時はその言葉で吹っ切れて、翌日の初日はすごく楽しかったです。そこから舞台自体もどんどん楽しくなって、今回は5年も時間が空いてしまったのですが、私はできることならもっとコンスタントに舞台に立ちたいなと。お客さんを前にお芝居ができる喜びやライブ感は何度やっても初心に帰らせてもらえる感動があるので、久しぶりの舞台は今から楽しみで仕方がないです」
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