――監督の武内さんはコメディーを得意とされている方ですが、演出はいかがでしたか?
すごく新しいなと思ったのは、監督がすごくスピード感を大切にされていたことでした。僕としては健司目線で芝居をするんですけど、当然のことながら監督は全体の構成を考えられていて。それで前半はドタバタ、後半は少しスピード感を変えていきたいと言われ、それを体現するために監督と話し合いながらセリフの間などを考えていきました。完成した作品を見て、あらためて武内監督の演出はすごいなと思いました。
――モノクロ映画のヒロインであった美雪は、スクリーンの中から見たカラフルな現実世界にあこがれ、こちら側に飛び込んできます。現実的に映画は無理だとしても、舞台だと客席側をある程度見ることはできるのでしょうか?
僕がやらせていただいた「かもめ」という舞台は照明が暗かったので、極端だったのかもしれませんが、あまり客席が見えることはなく…。それでもお客さんの反応はビビットに伝わってきました。そのときに絶対に不可能なことだとは分かりつつも、自分が舞台に立って芝居をしている姿を生で見てみたいと思ったので、常に見られる側だった美雪が別の世界に行ってみたいと思う気持ちは分かるような気がします。とはいえ、自分が演じている姿を見る怖さもあるんですけどね。
――というのは?
笑福亭鶴瓶さんがやってらっしゃる「鶴瓶のスジナシ」(TBS系)という番組に出させていただいたことがあるんですが、あれはスジナシでお芝居をしているときは、ルールとしてあえて誰も反応しないようにしているんですよね。ときどきスタッフさんの笑い声がもれることもあるんですけど、基本的にはみんな無反応。舞台だとお客さんの反応がダイレクトに伝わってくるし、映画やドラマの場合は監督の指示があるけど、「スジナシ」は本当に正解がなくて。なので、自分がやっていることに対して不信感を抱いてしまうというか、これで本当に大丈夫なのかなという気持ちが募ってくるんですよね。まあ、「スジナシ」という番組が特殊なんだと思いますけど(笑)。
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