【テレビの開拓者たち / 角井英之】「アンビリバボー」生みの親が語るテレビの未来

2018/02/25 06:00 配信

芸能一般

矢作俊彦さんの仕事場で2カ月くらい一緒に住んでたんです(笑)


「平成教育委員会」「―アンビリバボー」のほか、「たけしの日本教育白書」(2006年ほかフジ系)、SPドラマ「遙かなる約束」(2006年フジ系)などのプロデュースを手掛けた角井英之氏


――では、プロデューサーとしての初仕事は?

「正確に言うと、『酒場をめぐる冒険』(1987年フジ)という深夜の単発番組が僕の初プロデュース番組なんです。フジテレビが深夜放送を始めたころ、企画を募集していたので、ダメ元で企画書を書いて送ったら、なぜか採用されまして。ただ、僕は当時まだADでしたから、プロデューサー兼ADという、珍しい立ち位置で作ることになって。当然、プロデューサーらしい扱いは誰からも受けず(笑)。ことあるごとに、先輩のディレクターから『おまえはそもそもどういう番組にしたかったんだ?』と確認してもらいながら、何とか形にしていくような感じでしたね」

――どのような内容の番組だったんでしょうか?

「カクテルなども含めたお酒の起源や成り立ちを紹介したり、お酒や酒場まわりの人間ドラマを見せたりする番組です。そのころ、個人的に僕がお酒を覚えたかったというのもあって考えた企画なんですけど(笑)。でも、制作が始まってから、だんだんすごいことになっていって。僕が昔から大ファンだった作家の矢作俊彦さんにも出ていただきたくて、ご本人に会いに行って直接出演交渉をしたんですよ。そうしたら、『ひとつ条件がある。その番組のディレクションを丸々俺にやらせてくれ』と。結局お願いすることになって、脚本は矢作さんの書き下ろし、矢作さんのお友達だった宍戸錠さんが出演、矢作さんが監督という、超豪華なショートドラマも実現しました。矢作さんには本当に親しくしていただきましたね。実を言うと、『酒場をめぐる冒険』を作っている間、矢作さんの仕事場で2カ月くらい一緒に住んでたんですよ(笑)」

――なんともぜいたくな番組ですね! また、たけしさんが企画して大ヒット番組となった「平成教育委員会」(1991年~フジ系)のお話もぜひお聞きしたいのですが。

「『平成教育委員会』は、番組が始まって2年目くらいから、2代目のプロデューサーとして参加しました。この番組に関しては、実は自分の中で、試行錯誤の時期がけっこう続いたんですよね。もちろん、入試をモチーフにしたクイズの面白さは理解していましたし、司会のたけしさんと逸見政孝さんのトークも、ものすごく面白い。でも、この番組の本当の楽しさはどこにあるのか、最初の数年間は、そこを探りながらやっていました」

――試行錯誤の末、答えは見つかったのでしょうか?

「この番組の解答者のキャスティングについては、初期からずっと、スポーツ界や芸能界など各分野のトップの方々を、しかもジャンルがかぶらないように12人お呼びする、というコンセプトがあったんですね。でも、そんな各界のトップの人でも、問題を間違えたり、答えられなかったりすることもある。例えば先輩のプロデューサー時代、糸川英夫さんに出演していただいたことがあるんですが、あの宇宙工学の権威である糸川さんでも、中学の理科の入試問題を間違えることもあるわけです。でも逆に、番組を見ている子供たちは、『理科の問題ができなくたって、糸川先生みたいになれるんだ』、『入試問題が分からなくても、世界のトップになれるんだ』、そう感じることができるじゃないですか。そこも番組の大きな魅力なんだと、ある日気付かされたんです」

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