【テレビの開拓者たち / 堤幸彦】「墓場に持っていく作品のテーマ探しに入っています」

2018/04/01 06:00 配信

芸能一般

“誰もが楽しめるテレビドラマ”なんて、もうありえないかもしれない


「ターゲットを定めて、一定層には確実に突き刺さる、そういう作品を腹を括って作っていかないと」と、“テレビの作り手にとっての未来”を語る堤幸彦氏


──東日本大震災を題材にしたドキュメンタリードラマ「Kesennuma,Voices.東日本大震災復興特別企画~堤幸彦の記録~」(2012年ほかTBSチャンネル)は、そんな新たな「アプローチ」の1つでしょうか。

「これまでいろんな面白い仕事をさせていただきましたけど、僕も還暦を超えて、墓場に持っていく作品って何だろうと考えたときに、世の中の不条理ときちんと向き合った作品を作りたいなと思ったんですよね。『MY HOUSE』(2012年)という映画ではホームレスという題材を取り上げましたし、故郷の東海地区では、消滅可能性都市の子供たちにインタビューをしたり。今は、何年か後に『日本人とは何か』を根底から問うような作品を作ろうと思って、既にテーマ探しに入っているんです」

──堤監督が作品のオファーを受ける際、こだわっていることはあるのでしょうか?

「何もないです。お話をいただければ、何でもやりますよ。僕の作品歴を見ていただければお分かりになると思いますけど、仕事を選んでいたら、こういうラインナップにはならないでしょ?(笑)」

──そういえば、「H2~君といた日々」(2005年TBS系)のときは、野球のことをほとんどご存じなかったとか…。

「『ショートって、どこを守ってる人ですか?』って聞いてたくらいですからね(笑)。ナインっていうのも、監督も入れて9人かと思ってましたし」

──(笑)。それでも、仕事を受けたからには、“来た球は打ち返す”と。

「そうですね。全部ちゃんと打ち返せているのかどうか、いささか不安ではありますが(笑)」

──今回の「SICK'S」は、ネット配信のドラマですが、地上波テレビというメディアについては、どのように思われますか。地上波テレビの可能性は?

「いよいよ、中途半端なことをやっていては許されなくなってきましたよね。これまで地上波のテレビが延々と築き上げてきた“誰もが楽しめる作品”なんて、もうありえないかもしれないわけで、明確なターゲットを定めて、一定の層には確実に突き刺さる、そういう作品を腹を括って作っていかないと。今や、テレビのリモコンにネット配信のボタンも付いて、地上波放送もネット配信も並列に選択される時代ですからね。そういう意味では、いわゆる“テレビ的ではない”番組作りも、もっともっと真剣に進めていくべきなんだと思います。そんな中で、私がお役に立てるのであれば、地上波のテレビでも何なりとやらせていただきますよ!…営業かよ(笑)」