――個人的に印象に残っているシーンは?
千秋の本音がポロッと出ちゃうシーンですね。あの場面は、そのギリギリまで大の大人4人がフルパワーでケンカしているんですよ。
ちょっとでも集中力が切れようもんなら、ブワーっと吹き出しちゃうくらいおかしくて。
元をたどるとそれほど大したことではないんですけど、滝藤さんはヨーコ役の余(貴美子)さんに対して「ババァ、テメェ、この野郎!」みたいに、信じられないくらいキレた芝居をしていて、近くで見ていた私は「えっ、そんなに?」ってびっくりしました。
撮影が終わった後、滝藤さんが「さっき“ババァ”って言っちゃったから余さんが冷たい」みたいなこと言ってきたから、私は「それはそうですよ、あんなアドリブ言うんですから」って返しましたけど(笑)。
そんな、笑いが止まらないような芝居の後に、千秋が図星を突かれて本音を漏らすシーンなんですよね。
まだ、肩には荷物が載っかっている状態だけど、フッと力が抜けていくような、千秋にとって肝になる場面ということでちょっと怖かったですけど、何とか演じることができたかなと思っています。
――千秋のエピソードで言うと「珍宝館」のシーンもインパクトがありました。
本人たちは至って真面目だから余計に面白いですよね。千秋にとっては大事な夫婦の問題が絡んでいますから、真剣であればあるほど滑稽(こっけい)。そういえば、あのシーンも大変でした。
――榎田、清春、丈が近くで千秋たちの様子を見ていましたよね。
あれは、千秋と夫のやりとりと、そんな二人を見ている榎田たちのリアクションを別々に撮ったんです。榎田たちのカットの時は、画面に映っていなくても、私は反対側に立っていました。
千秋たちを見ている榎田たちの目線が必要になってくるし、そういうカットを撮る時は、例え自分が映らないとしてもお芝居にお付き合いするのが俳優の仕事だと思っているので。
だけど、あの大人たちはひどいですよ(笑)。大先輩たちに対して失礼だということは承知の上で言わせていただきますけど…、どいつもこいつも面白過ぎる(笑)。
特に滝藤さんの手の動きは、小ざかしいというか何というか、あんなことするかなってことを平気でやってきますから。
一生懸命我慢していましたけど、あの手の動きだけは飯塚さんに怒られることを覚悟で吹き出してしまいました。あれは、ずるいです(笑)。
――本当に、俳優さんたちのやりとり全部が「榎田貿易堂」の世界なんですね。
そうなんです。カットが掛かった後、滝藤さんから「笑っただろう」って言われて、私が「あれは無理ですよ(笑)」って言い返す、その責め合っている感じは丈さんと千秋の普段の会話ですし、そのまんま「榎田貿易堂」の日常でしたね。
――そういえば、榎田の口から時々飛び出す“名(迷?)言も面白いですね。
ドヤ顔で言う時は名言じゃないくせに、ポロっと言うことが意外と名言だったりするんですよね。何かいとおしく感じますし、榎田がみんなから愛される理由はそういうところなのかなって思います。
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