<W杯>元日本代表・戸田和幸、コロンビア戦は「負けなければいい」

2018/06/18 06:30 配信

芸能一般


――となると、日本の戦い方は。

「日本こそ組織や選手同士の距離を整えた上で、相手のギャップを突かなければいけない。コロンビアは守備面で人を意識してくる傾向が強いので、例えばボランチの2人をサイドに引っ張り出せば、トップ下のあたりが空いてくることもある。加えて、基本的には積極的にハイプレスをかけてこない。となると、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督のもとではほとんど見られなかった、最終ラインからのビルドアップを意図的に多用して、組織として敵陣に攻め込んでいかなければいけない。ザッケローニ監督のやり方を、ある程度取り戻す必要があります」

――ボールを保持する、と。

「ボールを持つことがリスクになる場合も、もちろんサッカーではありえます。ただ、どのように持つかが大事なんです。最終ラインからのビルドアップと言っても、パスをひとつずつつないでいくことではなく、前線へ意図的にボールを運ぶことを意味します。最終ラインから40m先のFWへロングボールを入れるのもビルドアップであり、日本としては意図を込めることのできる組織と選手の配置を考えればいい。例えば最終ラインは3枚でいいと個人的に思っています」

――キャプテンの長谷部誠は所属するフランクフルトで、3バックの真ん中として高く評価されています。

「長谷部を真ん中におけば、状況に応じて前に出すことで4バックにもできる。5バック気味になってズルズルと下がるのではなく、重心を後ろにかけながらも、あくまで前へ奪いにいくという意味ではありだと思います。実際、ブンデスリーガでの長谷部のパフォーマンスは非常に高い。狙いを定めてボールを奪えているし、相手のプレスを止めながら味方の中盤へうまくボールも預けられますし、左右に散らすこともできているので」

ボックス周辺でどれだけフリーキックをとれるかも重要


――3月のベルギー遠征では、2試合ともボランチでの出場でした。

「最後尾から全体の戦況を眺めながらプレーするのと、一列前のポジションで視界が360度に変わるのとでは全然違ってきますからね。代表では懸命にボランチへなじもうとしていましたけど、パフォーマンス的にはいまひとつでした。グループHの対戦国は、いずれもワールドクラスのアタッカーを擁(よう)しています。特にファルカオとハメス・ロドリゲス(バイエルン・ミュンヘン)に加えて、右サイドにはファン・クアドラード(ユヴェントス)もいるコロンビアに4バックで臨むのはどうなのか、という問題もあります。ならば3バックで臨み、守備時には左右のアウトサイドも下がって5枚にする形もありだと思います。守備の人数を多めにそろえておくという意味でも、長谷部をフランクフルトと同じポジションで起用するのは有効な手段だと考えます」

――戦い方が大きく変わります。

「ハリルホジッチさんが求めた守備は、人をマークするところから始まっていました。よく言われるポジショナルプレーとは、意図的にスペースを作り出すために選手を配置して相手を動かすこと。3月のウクライナ代表戦では相手のインサイドハーフが左右に開くことで、マーク役の長谷部や山口蛍(セレッソ大阪)も動かされ、生じたスペースにサイドの選手が入り込んでくる状況を何度も作られてしまいました」

――マンマークを逆に利用され、組織を崩されたわけですね。

「サッカーで最もエネルギーを使うべき場面は、相手ゴールへ向かう瞬間とボールを奪われた直後です。ポジティブでもネガティブでも、要はトランジションのスピードで常に相手を上回らなければいけません。切り替えの瞬間にスペースを圧縮できれば、もちろん球際で戦わなければいけない。そこで初めて、ハリルホジッチさんがよく言っていた『デュエル』が必要になってきます」

――和訳すれば「1対1の決闘」となるフランス語ですね。

「日本人の体が急に変わるわけではない以上は、ピッチのいたるところで1対1のけんかを挑んだところで勝てません。特に南米のコロンビアにとっては、1対1の攻防はまさに望むところでしょう。相手の土俵に立たないようにするためにも、日本はできるだけボールを持った方がいい。何も1対1を避けるという意味ではなくて、1対1を挑まなければいけない場面をこちらが意図的に用意すればいい、というわけです」