「白の美術館」(テレビ朝日/BS朝日)で、自身のアートシリーズ「REACH OUT」の新作を完成させた木梨憲武に独占インタビュー! 後編では、円いキャンバスに描いた新作を写真付きで公開するとともに、番組で初めて挑戦した画法を自ら解説。さらに、アーティストとしての創作への取り組み方、さらに今後の展望にも肉迫!
──今回の「白の美術館」では、よくホットドッグなどに使う、ケチャップやマヨネーズの容器を画材として使っていましたよね。ケチャップの代わりに絵の具を入れて、キャンバスに吹き付けるという描画法には驚きました。
「使ったのは初めてなんです。知り合いのお好み焼きの店のアニキが、この容器を長年使ってるんだけど、使い方がプロ中のプロで。お客さんの前で、大きく振りかぶりながらマヨネーズを出すっていうパフォーマンスをして、お客さんが『キャー』って喜んでお好み焼きを食べるんですよ。それがかっこよくって、『俺もやってみたい!』って思ったんです。で、さっそく合羽橋にこの容器を買いに行って。本来は、前日に絵の具の出具合をちゃんとチェックするべきなんだろうけど、それだと何か面白くないから、本番一発勝負でやっちゃいました。まぁ、絵の具が出たり出なかったり、うまく行かないっていうのも、それはそれでありだと思うんで。
結果的に、色も線も、いい感じに仕上がりましたね。テレビ番組だから、本当はお店のアニキみたいに、もうちょっと振りかぶって高い位置から“ぴゅー”って出したかったんだけど、手のひらの形を描きたかったから、そこを意識するとなかなかコントロールが難しくてね。でも逆に言えば、あのアニキも、さすがにお好み焼きに手のひらは描けないだろう、と(笑)。とにかく、いい方法を見つけたなと思ったんで、今後しばらく、アトリエでもこれで遊んでみようと思ってます」
──テレビカメラが入ると、一人でアトリエで描いているときの感覚とは違ってくるものなんでしょうか?
「う~ん、ちょっとは違うんだけど、何か今はもう平気になっちゃいましたね。スタッフがそろそろ撤収したがってるなぁっていうのも何となく分かるし(笑)、だいたい4時間までは付き合ってくれるだろうな、とかね。まぁ、カメラが入ってても入ってなくても、とにかく“やり過ぎ注意”ってことですかね。調子に乗ってガツガツ描いていって、『あのへんでやめておけばよかった』となると、またゼロから始めなきゃならないし、そのさじ加減の判断をするのは自分なんで。逆に、今回みたいな番組収録だとスタッフの意見も聞けたりするから、助かることもあるんですよ。アトリエで一人でやるときは、ヘタすると自分で記録しなきゃならないから。一応記録を取るために自分でビデオカメラを回すこともあるんだけど、カメラをセッティングして、録画のスイッチを入れて、キャンバスのところに行って描き始める、この一連の動きが悲しくてね(笑)。それこそYouTuberみたいにカメラに向かって『今から描かせていただきます』って言ってみたりして」
──なるほど、ギャラリーがいた方が創作のペース配分ができるのかもしれませんね。
「そうですね。例えば今回なら、『みんな(差し入れの)お団子を食べたいだろうから』ってことで、いったん作業を止めたり(笑)。番組としてどんな画が求められてるのかとか、どういうムードを作ったらいいのかとか、けっこうスタッフ目線で考えちゃうんですよね。われわれ、AD生活が長かったもんで(笑)」
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