マキタ:知的な感じで結ぶと、フリッパーズ、いとうせいこうさん、タモリさんとか、みんな通じる。そのカルチャー感は、この番組「ザ・カセットテープ・ミュージック」が持っている匂いだとも思いますね。こういう匂いをさせている番組が、地上波においては今皆無ですから。僕なんかも多感な時期にはそういうことをすごく意識したものです。
スージー:ブルーハーツもいとうせいこうも、これみよがしに知性を押し出したわけじゃないですけど、知性が透けて見える、あぶり出してみると見えてくる。そういうのは、今のJポップでは皆無でしょう。
マキタ:全然話の角度を変えると、ダウンタウンの登場で革命が起こったと思うんです。タモリさんやたけしさんが好きだったのは、例えばキェルケゴールなんかを持ち出すわけです。なんだそれ?と思って一生懸命調べるわけ。その上で笑っといたほうがいいのかな?と考える。たけしさんもドップラー効果とか学校で教わった言葉を笑いに練りこんだり、弁証法なんて言葉を使ったりね。それを調べた上で、僕らは「知ってる知ってる」って振りをしてた。
――今の40代、50代はその傾向は強いかもしれないですね。
マキタ:そういうのがあったじゃないですか。ところがダウンタウンというのは、尼崎の地を這う中、フィールドワークで得た知性じゃないですか。あの人たちは、アカデミックな言葉は持ち合わせてないから使わなかったし、関西方面の人たちの合理性では、インテリな言葉を使うことがダサくて都会的じゃない。臭みを出したらおしまいってところがある。ニュータイプの笑いなんですよね。クイズのネタを見た時、ひっくり返って笑ったもの。
スージー:「花子さんがお風呂屋さんに行きました、さてどうでしょう?」。問題が分かりにくい(笑)。
マキタ:すげえ頭の悪い会話だけど、ホントひっくり返るほどの衝撃があって。たけしさんとかだとインテリな言葉遣いでネタにするんですよ。そっちの方でずらしの笑いにしてた。たけしさんとかタモリさんと比べると、平ったい言葉を使いながら、すごいなって思った。
また話がずれるけれど、たけしさんはスポーツ選手に対するリスペクトがすごくあった。名を成している人へのリスペクトですね。でもダウンタウンはそれを見せなかった。若貴全盛期に「あのブーちゃんたち」とか言ってしまう感覚とか、びっくりしましたね。価値観が書き換わった感じがした。
スージー:世代的にいえばビートたけしさんは昭和22年ですから団塊世代で、吉田拓郎とか井上陽水とかと同じ。ダウンタウンは昭和30年代後半ですから、もっと後のブルーハーツとか。団塊の世代に対するアンチみたい存在じゃないですかね。
ブルーハーツというのは、ラジオで初めて聴いた時に何のフォロワーかが見えなかった。ただ知的っていうか、ロック=バカみたいな、「お前が大好きアイラブユー」とか、そういうものではないのは分かりましたね。すごく知的な部分を刺激される感じがしましたね。
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