「カルテット」の“唐揚げにレモン”問題にも賛同!? 人気フードスタイリスト・飯島奈美の仕事論

2018/08/17 06:00 配信

芸能一般

作品の世界観にぴったりと合った、“おいしそう”な料理を作るのが理想


「映画やドラマの仕事では、“その人が作った”と思わせることが一番大事」と語るフードスタイリストの飯島奈美撮影=石塚雅人


──ドラマ好きの間では、いまだに名作と語り継がれている「カルテット」のフードスタイリストも務められました。

ちゃんと同じく、松(たか子)さんも満島(ひかり)さんも、普段から料理をされているので、とても楽しかったですね。満島さんは、『飯島さんの本を持ってます』なんて言ってくださって、私のレシピ本に載っている料理をほとんど作ってくださったみたいです。『チャーシューがすごくおいしかったから、レシピを教えてください』と聞きに来てくれたり。

私は、バタバタした現場でも、いつもおいしく作ることを心掛けているので、食事のシーンでは、カットが掛かってもみなさんそのまま食べ続けるので、つながりを考えて、料理の量を増やしてカットが掛かった状態に戻す、ということが何度かありました(笑)。

あと、唐揚げにいきなりレモンをかけるのはどうかということで、みんなが揉めるっていうシーンが話題になりましたけど、あれってけっこう、誰もが感じていたことだと思うんですよね。ていうか、私もそう思ってましたから(笑)。『そうそう、いきなりレモンをかけるのはよくないよね、ひと口目は何もかけないで食べたいよね』って(笑)。あれ以来、居酒屋とかでも、いきなりレモンをかける人は減ったんじゃないでしょうか」

──(笑)。シリーズの1作目からフードスタイリストを担当されている「深夜食堂」(2009年ほか、TBSほか)は、原作の漫画があるので、その再現が大変だと思いますが。

「『深夜食堂』の原作はファンの方も多いので、かなり細かいところまで再現することにこだわっています。ただ、原作の漫画は、ほとんどがモノクロで色が分からないので、再現がなかなか難しいんですよ。『これは錦糸卵? それとも野菜の千切り?』みたいな(笑)。どうしても分からない具材は、(原作者の)安倍(夜郎)さんに聞いたりしています。

そう言えば原作の漫画には、私の高校時代のエピソードが出てくるんですよ。初恋の人にお弁当を作っていたという話なんですけど、それはまだドラマにはなっていなくて、今からドキドキしてます(笑)。ドラマ化が決まったときは、初恋の相手を誰が演じるのか、そこだけは厳しくチェックさせていただこうと思っています(笑)」

──それでは最後に、飯島さんが、映画やドラマのフードスタイリストを務める際、最も大事にされていることは?

「一番意識しているのは“この料理は登場人物の誰が作ったのか”ということですね。例えば『深夜食堂』では、小林薫さんが演じるマスターなら自然に手際よく盛り付けるはずだというように、“その人が作った”と思わせることが何よりも大事だと考えていて。食材の切り方も、料理の盛り付け方も、『この人だったらこういうやり方をするだろうな』とか、料理を盛る器にしても、自分の趣味はいったん置いておいて、『この人はこんな食器を使うんじゃないかな』というふうに発想しています。

最近は『飯島さんの料理が見たいから』といって作品を見てくださる方もいらっしゃって、それはもちろん大変うれしいことなんですけれど、私としては、自分の作る料理が悪目立ちせず、作品の世界観にぴったりと合っているのが理想。単純に『おいしそう』と思ってもらえることが一番うれしいんです」