小さな産婦人科医院を舞台に、その“光と影”を描くドラマ「透明なゆりかご」(NHK総合)の制作統括を務める須崎岳氏。この作品では、重いテーマながらも、いかに視聴者の心に届くかを意識しているという。これまでにも、「弟の夫」(2018年NHK BSプレミアム)や「鉄の骨」(2010年NHK総合)など、数々の“社会派ドラマ”を手掛けてきた須崎氏に、作品づくりの信条やこだわりを聞いた。
──現在放送中の「透明なゆりかご」の企画の発端からお聞かせください。
「人から勧められて原作コミックを読んだとき、自分はこういう仕事をしていますし、涙腺は固い方だと思っているんですが、随所でボロボロ泣いてしまったんですよ。これをドラマ化するのは大変だな、なまじっかな気持ちではできないなと思いましたけど、その一方で、やらなきゃいけないなと。そして、これは今やるべき作品だとも思いました。子供を産んだことのある女性だけでなく、これから結婚して子供を産もうとしている人や、わけあって子供を持たない人、自分の思いで独身を貫いている人…全ての女性に響くはずだという確信めいたものがあって。もちろん、男性にも知ってほしい普遍的な物語だと思いましたし」
──中絶や死産といったヘビーなテーマも描かれる作品ですが、ドラマとして見やすいものにするために意識されていることはありますか。
「どうやって間口を広げるかということは意識しましたね。具体的に言うと、原作を読んだときに感じる、重たい中にもどこかほっこりするような感覚を、映像でどうやって表現するのか。その点では、清原果耶さん演じるヒロインの看護助手の、“命”を見つめるまっすぐなまなざしが、視聴者にとって共感できるポイントになっている気がします。中絶や死産の一方で、幸せな出産もあるという、産婦人科の光と影の両方をしっかりと描いて、シリーズ全体として“希望”のようなものを感じていただけたらうれしいですね。原作にはない『海の近くの病院』という設定にも、光や希望を感じてほしいという意図が込められています」
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)