「透明なゆりかご」プロデューサーが語る“社会派ドラマのつくり方”【テレビの開拓者たち・須崎岳】

2018/08/20 18:45 配信

芸能一般

一生懸命生きている人を描きたい。一人一人の思いに寄り添うことも、ドラマの役割だと思います


「ドラマで“答え”は出せない。唯一できるのは“問いかけること”だけ」という須崎岳氏撮影=源賀津己


──社会派ドラマとは趣の違った朝ドラの「花子とアン」(2014年NHK総合ほか)も手掛けていらっしゃいますね。

「貧しい農家に生まれた少女がお嬢様学校に行き、翻訳家になるというサクセスストーリー。そういう意味では、格差社会にも通じる題材を持った作品でしたが、これもやはり、社会の格差そのものよりも、貧しい人たちにも裕福な人たちにも、それぞれに生き方や矜持があるわけで、それを丹念に紡いでいきたいと思いました。物語の時代背景として戦争も描きましたが、今の僕らから見た戦争ではなく、主人公の花子(吉高由里子)をはじめ、当時の人々は戦争というものをどう見ていたのか、どう感じていたのか、そして、その中でどんなふうに生きていたのか、それをすごく考えながら、描いたつもりです」

──LGBTをテーマにした「弟の夫」(2018年NHK BSプレミアム)も、大変な注目を集めました。

「BSのドラマがインターネットのトレンドワード1位になるなんて、びっくりしましたね。年配の方はLGBTに対して理解が薄いとも言われますが、「うちのおばあちゃんから『見た方がいいよ』と勧められた」なんていう声もあったり、とてもうれしい反応が多かったです。

あの作品は原作がとても繊細なバランスの上に描かれているので、敢えて忠実に描きました。僕はLGBTに対して差別意識はない方だと思ってましたけど、それでも知らなかったことがたくさんあって。やはり、これも今伝えなければいけないなと思って制作した作品です。特に決めゼリフもなく、音楽もあまり使わない、淡々とした見せ方が、作品の強いメッセージ性とマッチしたのかなと思いますね」

──では、須崎さんが今後、作ってみたいドラマは?

「どんな状況にあっても一生懸命生きている人を描きたいということは一貫していて。これは僕自身もそうなんですが、東北のあの震災以降、大仰なことではなく、身近なところに幸せや生きがいを見出そうとする人が増えたような気がするんです。そうした一人一人の思いに寄り添うことも、ドラマの役割なんじゃないかなと思っています」

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