<半分、青い。>全156回を書き上げた北川悦吏子、永野芽郁とは「同志だったなと思います」

2018/09/19 06:00 配信

ドラマ インタビュー

9月29日(土)に最終回を迎える連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK総合ほか)を書き上げた北川悦吏子にインタビュー。撮影=萩庭桂太

書き上げられたのは本当に奇跡で、書き上げられて本当に良かった


――書き上げてみて、今のご心境は?

今は本当に「あしたのジョー」の矢吹丈ように真っ白な灰になったような気分で、魂を抜かれてしまった感じです(笑)。

“15分×156回”の台本を書くことについて、“朝ドラ”を書いた先輩から伝わってきた感じだととても大変そうなので、体の弱い私が「やりたい!」という思いだけで突入して大丈夫だろうかと思ったんですけど、書き始めたらもう書き上げるしかなかったので、本当にすごい体験になりました。

書き上げられたのは本当に奇跡で、書き上げられて本当に良かったです。

“15分×156回”という枠組みの中で脚本を書いたことがなかったので、そこに一番興味をひかれていました。1時間枠の連続ドラマや映画とは全く違うものなので、クリエイター心を刺激されました。

試行錯誤しながら一年半かけて書いているんですけど、大変な時もあるけど、続けていくうちに、どんどん新しい技を編み出していけるので楽しみを感じていました。

――主人公・鈴愛の強い一面と弱い一面のバランスはどのように描かれていましたか?

自分ではそこは計算していなくて、鈴愛という強いヒロインを描きたいという気持ちと、片耳を失聴したり漫画家としての才能がなくて挫折しても、「人は生きていくんだよ」という強いメッセージが自分の中にあったので、それを体現したくて鈴愛ちゃんというヒロインが生まれたと思っています。

私が左耳を失聴して傘をさした時に、左側が雨を降らないと思った時に「半分、青い。」というタイトルが浮かんで来たんです。

直感でひらめいた「半分、青い。」というタイトルをつけたら、「こういう意味かな」と色んな人が考えてくれるんですよね。「『まだまだ人間として青い』という意味かな」など、具体的なタイトルではなかっただけに、色んな人が思いを託せたのかなと思います。

――ヒロイン・鈴愛を見守る晴さん(松雪泰子)、和子さん(原田知世)、そして父親のように鈴愛達を包む秋風先生(豊川悦司)に涙を誘われた視聴者も多いかと思うのですが、この3人に込めた思いは?

晴さんは、ヒロインのお母さんなので私の母を連想したり、私も一人の娘の母なので自分が晴さんの気持ちになったりしました。でも、晴さんは昭和時代のお母さんなので、自分の母を投影した部分が多かったかなと。

やたらと「嫁に行け」と言いますけど、その世代の方は当たり前に言っていて、私はそれを「嫌だ」とも思わず「母親というのはこういうものなのだな」と思ったので、それをそのまま書いた感じですね。

すごく物分かりのいい都会的なお母さんというわけではなくて、自分の田舎の母はこんなことを言うなと、どんなに厳しいことを言っても娘のことを配で大好きだよね、というのを大事にして書きました。

和子さんに関しては原田知世さんへの完全なあて書きで、出産の時に自分の分娩台がないというちょっと笑っちゃうようなところから始められたのは、原田さんだったからだと思います。個人的にお付き合いさせていただいて感じるのは、原田さんって“ジブリの世界”から実写に出てきたような方で、まさに奇跡なような人です。心が綺麗で穏やかで優しい。そのままを、和子さんに託しました。

秋風羽織については、私が創作について思っていることを全て彼が代弁してくれています。私はあそこまで強く生きられないけど、“秋風羽織”というビジュアルを借りれば言えるのかなと思ってどんどん、セリフがエスカレートして行きました(笑)。

私と豊川さんは「愛していると言ってくれ」(1995年、TBS系)で33歳の頃に出会ったのですが、豊川さんは作品によくにのめり込む方だなという印象なので、「愛していると言ってくれ」をやるときも手話は完璧でしたし、画家の役なのでフランス・パリに行ったりしていたし、私もその勢いを借りて、ふたりで人物像を作り上げられたらな、と思ってやってました。

今回は“朝ドラ”だし、お互い五十歳過ぎたし、その時程の熱はないだろうと思っていたんですが、なんのなんの、衰えず当時と同じようなテンションで今回も一緒に作り上げました。

「変わらないんだな、人って」と思うと同時に、だからこそ秋風羽織というキャラクターが出来上がったんだなと思います。

終わった頃には、「還暦になるまでにもう一本やろうよ」と声をかけてくださって、私も体力をつけて頑張らないといけないなと思いました、うれしかったです。