伊藤銀次と語る著名ミュージシャン逸話にスージー鈴木「楽しいなあ」

2018/10/05 14:37 配信

音楽 インタビュー

実は伊藤銀次も破門されていた・ロネッツ事件


伊藤:大滝さんとよく中古レコード屋に行っていたんですよ。いちおうの縄張りを決めてあって、1964年より後は僕の陣地。64より前は大滝さん。「64年より前のものを見つけたら、何でもいいから買ってくれ。ダブってもいいから」って大滝さんに言われてた。「その代わり銀次の好きそうな64年以降は買っておくから」って、取り決めをしてあった。

ある時、水道橋で、ロネッツのコンパクト版の4曲入り、日本のみの編集のものを見つけて。ビー・マイ・ベイビー」とか、クリスマス頃だったから、「ママがサンタにキッスした」とかが入っていた。

それを持って帰って家で聴いてみたらすごく良かった。でも、ギリギリ64年なんで縄張り的には大滝さんのものなんですよね。

その日、僕がレコード買いに行ってるのを知ってた大滝さんが遊びに来た。こんなのがあったんですよって見せたら、すぐ財布を出して「いくらだった?」って、これは俺のだよな、みたいに言う。悪いけどこれは自分のものにしたいって言ったら、大滝さん怒ってね(笑)。縄張り的に言ったら俺のだろ?って。

そうしたら「分かった。ちょっと待ってろ」と家まで帰って、前から僕が欲しいって言ってたビリー・J・クレイマーとダコタスのアルバムを持って来てくれて、「これと交換しよう」って。

でね、僕もまたずるいのは、これはまだ買えるような気がしたんですよ。

スージー:あっはっはっは(笑)。

伊藤:探せばあるような気がしたから、「いや、やっぱりこれは持っていたいんで…」と拒んだら、大滝さんカンカンに怒って。そして、僕も破門になったんですよ。

スージー:いろんな人を破門してるんですね。

伊藤:しばらく大滝さん家に来なかったですよ。実はこれには後日談もあるんです。大滝さんはクレイジーキャッツのレコードをすべて集めていたんですよ。その中で大滝さんが持ってないのを見つけたから、「ありました」と送りましたよ。ロネッツのお返しに。

スージー:それはいい話ですね。

大滝詠一の話は楽しい


「Re:spect」本編でもインタビューでも炸裂した“トーク版伊藤銀次節”。長いキャリアの中で蓄積された実体験に裏付けられたエピソードは、興趣が尽きない内容ものだった。

インタビュー後、スージー鈴木は「楽しいなあ、楽しいなあ。大滝詠一話はなんでこんなに楽しいんだろう」と声に出していた。

珠玉の演奏とともに、軽妙なトークを生で体験できる伊藤銀次のライブは、10月14日(日)「伊藤銀次のI Stand Alone 2018 in 東京」(会場:東京・西荻窪Live Spot Terra)、11月1日(木)「 Sony Music Direct Presents『otonanoライブ』」(出演:伊藤銀次、大貫妙子、カズン、楠瀬誠志郎 会場:関内ホール・大ホール)、12月24日(月)「伊藤銀次のWINTER WONDER MEETING 2018」(ゲスト:杉真理、桑田靖子 会場:東京・吉祥寺STAR PINE'S CAFE)と、予定されている。