――まず東出さんに質問です。本作の脚本を読んで、どのようなことを思い、撮影に臨みましたか?
東出:せりふのニュアンスから「結構ハードボイルドな作品だな」という印象を受けました。ただ、監督と話していて「あまりハードボイルドにはしたくない。復讐(ふくしゅう)の鬼ではあるけれど、日常も表現していきたい」っておっしゃったんです。
やはりハードボイルドって「見得を切る」じゃないですけど、そういうお芝居をすると、キャラクター的には映えるけど限定されちゃうし、それだと監督とやる意味がないなって思いました。
――監督は脚本の鈴木謙一さんと物語を作っていたそうですが、撮影を振り返ってどんなことを感じましたか?
瀬々:探偵である東出君が、いろんな人に会って、事情を聞いて、事件の真相が分かっていく…という構造になるんですけど、どうしてもせりふで説明しなければならないことがたくさんあるわけです。でも実際に現場でいろんな俳優さんたちが事情を説明する中に感情を感じて、撮影を終えて振り返ってみると「エモーションが渦巻いている作品になったな」と思いました。
――東出さんは、本作で「瀬々監督ならでは」と感じた部分はありますか?
東出:根底に俳優部を信じていて、大海原に投げ出すというか「行ってこい」って背中を押してくれる演出があり、瀬々組らしいなって思いました。
あと監督は、人間がもがいているさまや、濁流の中の光明が見えた瞬間に救いがあるような作品や芝居がお好きだと思うので、俳優部が共通認識を持って「監督が好きなのはこっちだろう」ってのびのびやっていたのが、瀬々組ならではだと思いましたね。
――監督は俳優・東出昌大をどう感じてらっしゃいますか?
瀬々:「他者とのコール&レスポンスがすごいな」と。東出君と演技をやると、相手の俳優も輝くし、東出君自身も輝く。その化学反応が場の中で行われていますよね。
特に印象的なのが、映画「聖の青春」(2016年)の飲み屋のシーン。あれは東出君の良い面がさく裂して、あの名シーンができたのかな、ってふと思ったりするわけです。
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