――本作では、社会問題となっている「ブラック企業」「長時間労働」「パワハラ」といった環境で、必死に生きている若者たちの姿をユーモアや切なさを交えて描いていますが、話を聞いたときどう思われましたか?
映画がすごくステキな作品だったので、舞台でできるという話を伺い、すぐお受けしました。
この作品は、今の社会問題を掲げていて、それでも渦中にいる人間は一歩踏み出して強く生きていかないといけないっていうメッセージが描かれています。
ブラック企業は駄目だという提示をしながら、被害者の方も暗にかわいそうという話ではなく、生きていくためには自分で踏み出していかないといけないという、いじめっ子もいじめられっ子もどちらもたしなめるような話になっているんです。
偏りがないのですごく面白いし、見たら元気になれる作品だと思います。
――ファンタジー要素も強い作品ですが、舞台でやることの意義はどんなところにあると思いますか?
今回描く問題は誰にでも起きるかもしれないことだと思いますが、それを“社会問題”って言ってしまった時点で、僕は他人事にして身近な問題として捉えていない気がしていて。
なので、世界の片隅で起こる小さな事件を、世界の片隅の劇場で生の距離で見せられることは、距離を置いてしまいそうな物事に関して、小説や漫画、映像よりも身近に感じていただけるのかなと感じています。
舞台で届けることは、このテーマにとってすごく大きな意味を持つかと。
――今回演じるヤマモトは素性の分からないところもありますが、その人柄で青山を救っていきます。鈴木さんが思うヤマモトの魅力とは?
人生一周して、一度答えを出した人だと思っています。つらいことを経験し、その上で「幸せってこうだよね」と振り切っている。
答えが出ているからこそ、青山を気遣えると思いますし、悩んでいる人に手を差し伸べられる正義感や人間性など、ファンタジーレベルにいい人ですね。
でも演じる側からすると、そこにリアリティーを出していかないといけないので、ヤマモトにも苦難を乗り越えた瞬間があったということを意図してもらえるよう、丁寧に役を作っていかないといけないと思っています。幽霊なのか、分からない存在ですしね(笑)。
――ヤマモトに共感する部分はありますか?
実は、僕も青山みたいな時期があったんです。今はヤマモトとまではいきませんが、一つ乗り越えて歩み始めている時期。そういう意味でいうと、今の自分は青山よりはヤマモトに近いかもしれません。
ヤマモトみたいに自分の見詰め直した結果、僕も周りの人の大切さに気付けたので、そこはすごく共感できますね。だからこそ、ヤマモトは青山に手を差し伸べることができたと思います。
今回、ヤマモトの設定年齢は27歳なんです。僕は今30歳ですが、27歳のときは恐らくヤマモトの思いはまだ分かってなかった。30歳の今、このタイミングでこの役を演じられるのはありがたいですし、それを伝えていきたいです。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)