<いだてん>演出陣が語る「関東大震災」の表現

2019/06/16 21:37 配信

ドラマ

四三(中村勘九郎)は関東大震災後の東京をさまよう(C)NHK

6月16日放送の大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)第23回で描かれた“関東大震災”。

同回では、嘉納治五郎(役所広司)が、スポーツが育ってきた日本でオリンピックを開催できるよう、神宮外苑競技場の完成を急ぐ中、関東大震災が発生。壊滅的な状態になった東京の町を、主人公・金栗四三(中村勘九郎)はひた走っていた。

本作の脚本を務める宮藤官九郎は、2013年放送の連続テレビ小説「あまちゃん」(NHK総合ほか)で、東日本大震災が発生した岩手の姿を“ジオラマ”で表現した。

「あまちゃん」を担当したスタッフも多く参加している「いだてん」において、1923年の東京を描く映像表現で意識したのはどんな点だったのか。

第23回の演出担当で本作のチーフ演出である井上剛氏、そして6月23日(日)に放送される第24回の演出を担当した一木正恵氏に語ってもらった。

宮藤官九郎の“本質”を描く脚本を繊細に表現


井上:たくさんの映像や資料が残っているので、そこに寄せるようにしましたが、どこまでリアルにするか悩みました。音の付け方なども、僕らなりに繊細に表現するようにしました。

3.11以降、日本で災害が多くなったと感じている方も多いと思うので、この話がどうやって受け取られるのか、放送されてみないと分からないです。見る人によって、感想は違うのではないでしょうか。

ただ、脚本を含めて現在の我々が考える限りの「これがこのドラマにおける震災の表現じゃないか?」というものにはなったのではないかと思っています。

「あまちゃん」のときもそうでしたが、宮藤さんは悲惨な部分だけではなく、ドラマとしての表現で本質を見せてくれる脚本を書いてくれます。

第23回は夫婦の話も描かれますし、嘉納さんが作った神宮外苑競技場、のちの国立競技場が震災時にどんなふうに使われていたのかっていうことが興味深く見られるようにもなっていると思います。

一木:嘉納さんは、オリンピック予選をやるために神宮外苑競技場を建設していたんですが、震災がきて、その計画を全部やめてバラックとして提供するんですよね。

私も、「あまちゃん」のときの宮藤さんの脚本は、宮藤さん自身東北出身ということもあるからか、震災から日が経っていないころに放送されるものだからこそ、ものすごく繊細な表現がされていたと思います。

今回の宮藤さんの脚本は、人は悲しんでばかりではいられなくて、生きていくために、立ち上がるために何が必要かということが考え抜かれている脚本だと思いました。

涙を流す姿をエモーショナルに描くこともできたと思うんですが、そうではなく、笑っている人々の生命力という本質を描くことを目指した脚本なのかなと思っています。

だから、早い段階から笑いや娯楽が登場してきます。第24回は第1部のフィナーレとして、震災後の日本で四三がスポーツで何をできるのかと考えて実行していく様子をぜひ見ていただきたいです。

四三は、最初こそ現実に耐えられなくなって熊本に帰りますが、そんな人が東京にもう一度帰って来て何をするのか、そういう姿こそが宮藤さんのメッセージかと思います。