──高平さんは、公演が始まる前のインタビューで、「どこから読んでも楽しめる雑誌みたいな舞台にしたい」とおっしゃっていましたが。
高平哲郎:演出家というのは、雑誌の編集長と同じだと思うんですよ。振付師、ダンサー、そして映像、音響、音楽という、あらゆるスタッフ、キャストがやっていることをまとめて、いわば一冊の雑誌にする、というのが演出家の務めですから。その意味で、当初の目標は達成できていると思います。
さっき、バーヨークから「7回も見てくれたお客さんがいる」という話があったけど、偉そうなことを言ってしまうと、ショーというものは、リピーターが付かなければ価値はないと僕は考えていて。何度も楽しめるステージにするにはどうすればいいかということも、今回すごく考えたし、そのあたりはバーヨークとも相談しました。
──公演タイトルの「KEREN」は、元々、歌舞伎などの伝統芸能における“奇抜さを狙った演出”という意味の「外連(けれん)」という言葉に由来しているものだと思うのですが…。
高平:ええ、そうですね。転じて、「邪道」とか「はったり」という意味もあります。
──バーヨークさんは、以前のインタビューで「“KEREN”という言葉の意味は、“クリエイティビティに制限を掛けない自由さ”だと解釈している」とおっしゃっていました。一方、作・演出の高平さんは、“KEREN”という言葉にどんな思いを込めたのでしょうか。
高平:このプロジェクトは最初、劇場のコンセプトでもある「COOL JAPAN」を合言葉に動き出したわけですけど、僕がまず思ったのは、歌舞伎をフィーチャーしたいなと。そこで思い浮かんだのが、僕が歌舞伎の作家の中で一番好きな鶴屋南北だったんです。「(東海道)四谷怪談」にしても、「天竺徳兵衛(韓噺)」にしても、変なことばかりするんだよね、鶴屋南北って人は(笑)。「四谷怪談」では、ちょうちんからお化けを出すとか、戸板返しとか、「天竺徳兵衛」では、ガマガエルが出てきたりする。こういうのを全部取り入れたいと考えたときに、象徴する言葉は“外連”しかないなと思ったんですよ。
ただ、実は最初、「外連の国 不思議のニッポン」っていうタイトルを考えてたんだよね。だけどそのうち、もういっそ思い切って「KEREN」でいいんじゃないかって(笑)。今後この言葉が一人歩きして、海外で「KEREN」が「KARAOKE」と同じくらいポピュラーな言葉になったらいいなと思ってるんだけど(笑)。
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