一筋縄ではいかない千津の心の動きや行動が16年にわたるドラマをけん引し、ミステリアスに観客を誘う。鈴木杏がそんな千津という多面的なキャラクターをしなやかに演じ切る。
市子は、その突飛な言動で、真っすぐさの中に狂気がにじみハラハラさせる。冗談も真に受け、暴挙に走っている様は、その実、真情を見透かしている感もありドキッとさせられる。そんな危なっかしい市子を、ブルゾンは見事に演じている。
愛は、別荘に集った全ての登場人物たちをつなぐ存在でもあり、その言動が物語に一石を投じる。花乃は、愛と萌という愛憎を抱えた双子の、異なるキャラクターをそれぞれ巧みに演じ、2つの役の間をさっそうと行き来する姿に引きつけられる。
咲恵は、底抜けな明るさを持ち、初対面である娘の友人たちともパワフルに打ち解けていく。かと思えば、素っ頓狂に見えて、実は盲目であるが故に、事を敏感に感じ取る鋭さも見せる。シルビアの持つ華やかさも加わり、より魅力的な人物像を創り出している。
鈴木裕美の人間関係を綿密に編み上げる演出は、16年にわたる女たちの関係とミステリーを展開させながら、登場人物の心の機微を浮かび上がらせ、息をもつかせぬミステリー・コメディーを新たな形で創り上げている。
出演者を代表し、鈴木杏は「戯曲自体もスリリングですが、少人数でせりふ量も多い芝居なので、舞台上にいる私たちもスリリングな日々を送っています。でも、やればやるほど、KERAさんの戯曲の面白さ、難しさ、楽しさを体感しながら、日々過ごせているので幸せです」とコメント。
さらに、「この面白さを観客の皆さまにもお伝えできたらと思い、私たちも稽古を重ねてきました。これからいろいろな場所で公演をさせていただきますが、皆さまにお楽しみいただけるように、さらに精進して各地に伺いたいと思います。
ぜひ、劇場に足を運んでいただけたらと思っています。よろしくお願いします」とメッセージを送った。
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