――熊谷さんにとって「Dr.STONE」の一番刺さるポイントはどこですか?
熊谷:時流にすごく合った作品だなって思っているんです。この作品の一番おいしい部分ってやっぱりクラフトの部分なんじゃないかって思っていて、作る喜び、作る面白さにスポットを当てている。
戦う場面もあるけど、バトルものではないし。世間的にこのクラフトにスポットが当たり出したのは実は最近で、古くはゲームの「アトリエシリーズ」の“戦うより武器を作る方が楽しい”というのもあったけど、やっぱり「ドラクエ」のような“敵を倒す方が楽しい”という方が主流だったと思うんです。
そんな中で最近、「マリオメーカー」に端を発して、「製作者側って面白いんじゃないか」という空気が出てきたような気がして、それを受けるように「モンスターハンター」がドカンと受けて…といった感じで、“敵を倒す”というより“作る”という方がフォーカスされてきた気がしていたんです。
そういう空気の中でこの「Dr.STONE」が出てきて、すごく今っぽいなと。そこに着目した漫画作品ってあまりなかったですし。
他にもあったかもしれないけど、それをこの「週刊少年ジャンプ」というフィールドでやれるっていうのは本当にすごいなと。
稲垣:サバイバル漫画は結構あったかもしれないですけど、クラフトはそんなになかったかもしれないですね。この漫画を始める時に、「あまりサバイバルの方に行かないようにしよう」というのは割と早い段階で決めていました。
サバイバル漫画って昔から結構あって、面白いんですけど手垢が付くほど描かれてきたことなのであらためて描いても新しいエンタメにはならないだろう、というのがあったので。
ただ、ゼロから文明を立ち上げるっている話をしているのにサバイバルを書かないわけにはいかないから、当初はその矛盾に突き当たって、(サバイバル的な)立ち上げを描かなきゃいけない、でもそこを軸にしてしまうのは違う、ということで、1巻2巻でテクニカルな始め方にしたんです。
熊谷:なるほど! だから最初の最初で中盤の記憶として始まっているんですね。
稲垣:そうです。本当の1話は千空が目覚めるところなんです。当初のプロトタイプではその始め方になっているんですけど、「サバイバルを期待されちゃうのは違う」と。
「これは科学とクラフトの漫画なんだ」というのを見せなきゃいけなかった結果、テクニカルに(時系列が)逆さになっていったんです。
熊谷:確かに時系列は不思議な感じはしました。それって連載前から考えていらっしゃったんですか?
稲垣:そうですね。やっぱり最初の方はどういうキャラクターを配置するかっていうのがすごく大事になってくるので。
心が強過ぎる千空が目覚めて一人で黙々とやっていくというのではちょっと読者が入れないだろうと。だから、ちょっとテクニックでがちゃがちゃと入れ替えて…。
熊谷:じゃあ、連載前から1巻2巻くらいまでは構想は出来ている感じで?
稲垣:ぼんやりとは出来ていましたね。
熊谷:アニメを見ていて思ったんですけど、千空が意識を失っているところで最初の最初をやっているというのはテンポとしてすごく良いなと。
稲垣:コミック版では、「あそこで一旦序章終わり。ここからスタートだよ」とはっきり明示しているんですけども、アニメでは演出の都合でああいう形になったんですけどね。ストーンワールドの時系列的にも、千空の復活シーンが本来の第一話なわけです。
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