映画を愛するスピードワゴンの小沢一敬さんならではの「僕が思う、最高にシビれるこの映画の名セリフ」をお届け。第7回は、愛する我が子の脳死を宣告され、究極の選択を迫られた夫婦を描くヒューマンミステリー『人魚の眠る家(2018)』(9月14日夜8:00 WOWOWシネマほか)。脳死状態の娘を狂気ともいえる行動で守り抜こうとする母親の播磨薫子役を篠原涼子が、薫子の常軌を逸した姿に苦悩する夫、和昌役を西島秀俊が演じています。さて、どんな名セリフが飛び出すか?
──今回は『人魚の眠る家』をチョイスされました。
小沢「うん。まず、堤幸彦監督が好きなの、俺。堤監督って、いろんなパターンの作品があるでしょ。オタクも楽しめるようなエッジの効いた作品もあれば、この作品みたいに間口の広い作品もある。つまり、マジョリティにウケる作品も、マイノリティにウケる作品も両方できる。そこがすごいよね。この作品も普通に泣いちゃったし」
──原作は東野圭吾さんの人気小説ですが、東野作品は読んでますか?
小沢「好きですよ。特に初期の作品が好き。ただ、この原作は読んでなかったから、まったく内容を知らずに観たのね。そうしたら、篠原さんが途中でちょっとサイコパスみたいに、ホラー的になるじゃない。だから途中までは、怖い話なのかな? と思ってたら、実は非常にハートウオーミングな作品だった」
──役者陣もとても豪華です。
小沢「うん。みんな適材適所というか、役者さんは全員良かったと思うんだけど、なかでも良かったのが、川栄李奈さん。あの子、すごいよね? まだ若いのに。いつも報われない役が多いんだけど、それがまたハマるんだよね。そこで気付いたんだけどさ、川栄さんって最初の頃、いわゆるおバカキャラだったじゃん? 実は篠原さんも、かつて『ダウンタウンのごっつええ感じ(1991~1997)』に出てた頃はおバカなキャラだったんだよね」
──ホントだ。おバカキャラは名女優への布石ですか?
小沢「なんか、そういう系譜でもあるのかなって思っちゃうよね。今回の篠原さんも、すごい上手い。この作品は役者の顔がアップの場面がやたらと多いんだけど、みんなそのアップに耐えうる役者さんばっかりなんだよね。西島さんもそうだし。西島さんってさ、いつも不思議な演技をするじゃん。意図してやってるのかわからないけど、どの作品でもボーッとした顔の芝居をするの」
──確かに無表情の場面がありますね、いつも。
小沢「漢字で書くなら“虚”という字のような芝居。虚だから空っぽのはずなのに、ちゃんと存在感があって。あれは西島さんじゃないとできないよね。またその芝居が今回の、どこか他人事っぽい旦那の役にピッタリで。あの役は西島さんで良かったなと思った。やっぱり、映画ってキャスティングだよね」
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