――その4人の演奏スタイルがキャラクターの個性につながっているのも面白いところですね。
演奏の仕方も違うし、ピアノを弾いているときの表情も違います。あと、クラシックに疎い私なんかからすると、クラシックは落ち着いた感じのイメージがあったんですけど、この映画の演奏シーンは躍動感があって、アクションシーンのような感じなんです。なので、クラシックに詳しくない方にも高揚感が伝わると思いますし、ちょっと少年漫画のような構成になっているところもあるので、コンクールを「ドラゴンボール」の天下一武道会だと思って(笑)、誰が優勝するかを予想しながら楽しんでいただけると思います。
――この映画にはピアノの天才たちが登場しますが、身近にいる人で松岡さんが天才だと思う人を教えてください。
こういう仕事をしているので、天才だと思う人はたくさんいますが、今回共演させていただいた鈴鹿央士くんは天才だと思いました。これがデビュー作で、初めてお芝居をしているのに、セリフが自分の言葉として口から出ていて、どうなっているんだと思いました(笑)。無垢なところを含めて、彼は本当に天才だと思います。
――完成した作品をご覧になられて、印象に残ったシーンはありましたか?
風間塵くんとベートーベンの「月光」を連弾するシーンですね。あそこは原作どおりのシーンでして、そこで何ができるかなと考えたときに肉体同士のぶつかり合いでありたいと思ったんですね。この映画の中で唯一、自分が女性であることを意識したシーンでもあり、なるべく肉体が分かるようなピタッとした衣装にしてほしいとお願いしました。男と女として欲望をぶつけあっている感じが出ていてよかったのではないかなと思います。
あと、4人が海に行くシーンも好きです。撮影自体は風がものすごく強くて大変だったのですが、曇天だったこともあり、全体的にグレーで異空間な感じがするんですよね。このシーンの撮影ではさまざまなトラブルもありましたが、あの映像が撮れたので、映画の神様に救われたと思っています。恩田先生もこの二つのシーンが好きだと言ってくださっていて、作品としても肝になるシーンなので楽しみにしていてください。
取材・文=馬場英美
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