佐藤二朗が監督を務めた映画「はるヲうるひと」が、「第35回ワルシャワ映画祭」の1-2コンペティション部門(長編監督2作目までの部門)の正式出品作品として上映。佐藤が上映劇場で舞台あいさつを行った。
本作は、佐藤が主宰する演劇ユニット「ちからわざ」で2009年に初演、2014年に再演された舞台。この度、佐藤が原作・脚本・監督を手掛け、主演の山田孝之の他、仲里依紗、向井理、坂井真紀らの出演で映画化された。
上映が行われた250席の劇場には、客層も幅広い20代から50代の男女231人の観客が集まり、親日国としても有名なポーランドとあってか、上映前から多くの観客が興味を感じている様子。
シリアスなシーンとコミカルなシーンが織りなされる本編が始まると、ところどころに自然と笑いも起こった。
上映後に登壇した佐藤は「私は哲雄という役を本作で演じていますが、あんなに酷い男ではありません(笑)。日本ではコメディー作品に出演することが多いですが、俳優というのは世界共通だと思いますが、自分が持たれているイメージを覆したいと思っています。日本では来年公開なのですが、日本の皆さんをあっと言わせたいと思ってこういう役を書きました」とあいさつ。
多くの観客が熱心に佐藤の言葉に耳を傾けている中、ポーランド人の観客の一人は「映画にとても感動して、すごく気に入りました。今までの『ワルシャワ映画祭』の作品の中でも、今年上映されている作品の中でも、こんなにすごい映画を見たことはありません。今後ポーランドでこの映画が公開されることがあれば、絶対にもう一度見に行きたいと思います」と熱く感想を伝えた。
また、佐藤のツイッターを見て、映画祭に駆け付けたという日本人の観客からは「佐藤二朗さんは本当にすごく人気がある方なので、緊張しております。本当にいい映画をワルシャワで見させていただいてありがとうございます。シリアスなテーマの作品なのに、急にコメディーが入ってくるという、コントラストがすごいなと思いました。日本の映画館って、なかなか笑いが起きないと思うのですが、今回の上映ではところどころ笑いが起きていました。それは監督の想定内でしたか? そこまでの大きな笑いを想定していましたか?」と質問。
それに対して、佐藤は「正直、想定内です(笑)。ただ、うれしいのは僕が面白いと思って書いて演出をしていたシーンが、日本から遥か離れたポーランドで笑ってもらえていたので、こういう気持ちって海を越えるんだって思いました」と答えた。
さらに「僕は自分がグッとくることしか脚本に書けません。負を抱えた人たち、たとえば逆境、抑圧、生きづらさ、そういう負を抱えた人たちが、飛躍的に劇的に成長するのではなく、ほんの1ミリだけ、ほんの半歩だけ、もがきながらも前を向こう、踏み出そうという姿にグッとくるので、僕が書くと、どうしてもそういう脚本になってしまいます」とアピール
30分ほどの舞台挨拶を終えた佐藤は劇場を出ると、まだまだ質問したりない熱心なワルシャワの映画ファンに囲まれ、作中に関する日本の背景や文化にまで幅広く質問が及び、約1時間をかけて一人一人に丁寧に質問に答えていた。
映画「はるヲうるひと」は2020年に全国公開を予定している。
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