「清須会議」「のぼうの城」「関ヶ原」...時系列で観るとよく分かる、武士たちが為したもの<ザテレビジョンシネマ部>

2019/11/01 07:00 配信

映画

『のぼうの城』 11/4(月・休)午前11:30他(C)2011『のぼうの城』フィルムパートナーズ


群雄割拠の武将たちが天下統一を目指し、激しい火花を散らした戦国末期(安土桃山時代)は、同じく時代の大転換点となった幕末と並び、いつの世も人々のロマンをかき立ててきた。

歴史にそれほど興味がない人にとっても、織田信長や豊臣(羽柴)秀吉、徳川家康らが残した数々の業績は、教科書はもとより、多くの文学&映像作品で一度は触れたことがあるに違いない。

そんな英傑たちの波乱に満ちた生涯やその家臣らの奮闘などを、戦国末期から江戸時代が舞台の時代劇を関連付けて観ることで、たとえ歴史に明るくない人でもすっきり理解できるだろう。

もちろん映画であるから多分にデフォルメはあるものの、彼らがどんな人物で何を為したのか、そして歴史はいかに動いたのかをエンタメ作ならではの視点で面白く学べるはずだ。

秀吉の覇権を決定づけた『清須会議』


【写真を見る】「清須会議」では秀吉を大泉洋が熱演!(C)2013フジテレビ 東宝


大の歴史好きとして知られ、大河ドラマで『新選組!(2004)』と『真田丸(2016)』の脚本を手掛けた三谷幸喜監督の『清須会議(2013)』(11月4日昼2:00 WOWOWシネマ)の舞台は1582年。

天下人となった信長は、信望も厚かった家臣、明智光秀の謀反に遭い本能寺で非業の死を遂げる。信長の腹心、秀吉はすぐさま光秀を討って敵を取るが、織田家の今後に向けて残務整理をしなければならない。

会議を行なうため清須城に参集したのは信長の重臣、柴田勝家、丹羽長秀、池田恒興、そして秀吉の4人(滝川一益は欠席)。表向きの議題は織田家の家督相続問題と領地の配分だったが、秀吉たちにとっては次なる足場固め、勢力図の書き換えの場にほかならなかった。

大泉洋演じる抜け目のない策略家の秀吉は、後継ぎとして信長の二男の信雄(妻夫木聡)を推し、役所広司扮する粗野で無骨で暑苦しいほどに馬鹿正直な勝家は三男の信孝(坂東巳之助)を推し、両陣営は対立。

秀吉、勝家双方共に、優柔不断でどっちつかずの恒興(佐藤浩市)らを取り込もうと腹を探り合い、懐柔作戦を繰り広げる。三谷作品としてはコメディ要素は薄めだが、曲者ぞろいの登場人物たちによる人間味丸出しのドラマが堪能できる。

天下人、秀吉に抵抗した『のぼうの城』に観る武士の意地


『のぼうの城』(C)2011『のぼうの城』フィルムパートナーズ


天下統一まであと一歩に迫った秀吉は、1590年、関東平定に出陣。一方、秀吉の小田原征伐に対抗する北条氏政は、関東各地の支城に籠城しての徹底抗戦を命じる。その支城のひとつが、成田氏の本拠である忍(おし)城だった。

秀吉に忍城攻めの大将を任じられた石田三成率いる2万人の大軍勢に対し、成田氏側の手勢はわずか500人という圧倒的な劣勢。しかも忍城総大将の成田長親は、普段から農作業などで領民と交わり、彼らから「でくのぼう」転じて「のぼう様」と揶揄される、武将らしからぬ頼りない男。

映画『のぼうの城(2011)』(11月4日午前11:30 WOWOWシネマほか)ではそんな長親が、弱者ならではの戦法で強大な豊臣勢を翻弄していくさまが痛快に描かれる。

つかみどころのない長親をひょうひょうと演じたのは野村萬斎。犬童一心と共同監督を務めた樋口真嗣による合戦シーンは見応えたっぷりで、なかでもVFXを駆使した「水攻め」のシーンは圧巻だ。

映画は和田竜のノベライズ共々、一般にはあまり知られていなかった、天下人秀吉に抗った実在の戦国武将の存在を広く知らしめることとなった。