天下統一を成し遂げた秀吉は1598年に世を去る。豊臣家の家督を継いだのが幼い秀頼だったため、実質的な政権運営は五奉行や五大老らが担っていたのだが、やがて権力闘争が勃発。時代は天下分け目の関ヶ原の戦いへと一気に突き進んでいく。
1600年のこの戦いは、簡単に言えば石田三成を中心とする豊臣側の西軍と、徳川家康をトップに頂く東軍の戦いである。
三成といえば「のぼうの城」でもそうであったように、敵役や悪役として描かれることが多い人物だが、映画『関ヶ原(2017)』(11月4日午後4:30 WOWOWシネマほか)ではその三成を主人公に据え、己が信じる「義」を貫いた彼の生き様に焦点を当てる。
脚本も手掛けた原田眞人監督は、司馬遼太郎の全3巻からなる大著から巧みにエッセンスを抜き出し、独自の解釈も交えながら関ヶ原の戦いへと至る武将たちの濃密な人間ドラマを構築。
リアリティを追求した合戦シーンはもとより、三成役の岡田准一、そして特殊メイクの太鼓腹で家康役に挑んだ役所広司の熱演も必見だ。
徳川幕府の成立によって長く続いた戦乱の世が終わり、ようやく訪れた天下泰平の江戸時代。武士たちにとっては戦のない安寧な日々かと思いきや、その裏には別の戦いがあった。
そのひとつが、幕府が諸藩の謀反を抑え込むために敷いた巧妙な人質戦略でもある参勤交代で、『超高速!参勤交代(2014)』(11月4日夜7:00 WOWOWシネマほか)と続編『超高速!参勤交代 リターンズ(2016)』(11月4日夜9:00 WOWOWシネマほか)は、そんな参勤交代をテーマにした作品だ。
両作共、舞台となるのは、1735年、陸奥国磐城の湯長谷藩。石高わずか1万5000石の吹けば飛ぶような小藩に「5日で江戸に参勤せよ」との無理難題が課せられる。理不尽とは思いつつ、お上には逆らえない藩主一行は総勢7名で出立し、時間がないために走って山越え&ショートカットの強行軍を強いられるなど悪戦苦闘。
おまけに、湯長谷藩にはお金がない。かといってみっともない大名行列を披露するわけにはいかず、一行は関所や宿場といった要所要所で行列を立派に見せるべく、あの手この手の偽装工作を繰り出していく。
武士を主人公にしながら、藩主の内藤政醇を演じた佐々木蔵之介らが話すいわき弁をはじめ、藩士たちの涙ぐましい努力や宿場の“飯盛女”との交流から見えてくる世界はあくまで庶民的で、思わずほっこりさせられる。
サービス精神満点な道中のチャンバラも見逃せない。コメディ色の強い作品だが、徳川300年の栄華の下地をつくった参勤交代というシステムが理解できる異色の時代劇だ。
この秋には、以上の5作に加え、『蜩ノ記(2014)』(11月4日午前9:15 WOWOWシネマ)、『座頭市 THE LAST(2010)』(11月4日夜11:00 WOWOWシネマほか)が放送される。まとめて観れば、その時代時代を生きた人々の秘められたドラマや、歴史の奥深さをあらためて再認識できるだろう。
映像エンタメ誌やweb媒体を中心に執筆する映画ライター。編集プロダクション、出版社、ピンク映画などを経てフリー。1964年生まれ。
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