実は手術がヘタなエリート外科医・潮も親しみが持てるし、海外帰りで英語が堪能なインテリ外科医・村崎公彦(藤森慎吾)はドヤ顔で英語を操るさまが何とも言えず愛らしい。清水ミチコに至っては未知子たちにモノマネレパートリーを披露。ドラマという枠を超えたはっちゃけぶりに、SNSでは「いきなり清水ミチコのモノマネショー始まって笑った」「中園ミホさん清水ミチコのファンだからな笑」「米倉さんたち素で楽しんでる!!」といった声が飛び交った。
ゲストのキャスティングにも遊び心がちりばめられた。5話では映画「極道の妻たち」に主演した岩下志麻が医療ドラマに初挑戦。“極妻”を彷彿させる和服姿で“伝説の看護師”を威厳たっぷりに演じた。8話には怪演女優・松本まりかが“失敗しないプリンセス”役で登場。男を手玉に取るテクニックを駆使し、未知子を相手に火花バチバチの戦いを繰り広げた。
このほか、ドラマ「中学聖日記」(日本テレビ系)で鮮烈なデビューを果たした若手俳優・岡田健史、“痔”で入院し週刊誌におびえる患者を演じた「ゲスの極み乙女。」の川谷絵音、映画「万引き家族」(2018年)で脚光を浴びた13歳・城桧吏ら旬なキャスティングが毎回話題をさらった。
どんなに枠をはみ出した“遊び心”が盛り込まれても、ドラマの世界観をまったく壊さないのが「ドクターX」のすごいところ。シリーズを通して「絶対に命を救う」という未知子の強い信念をブレずに描く一方、遊ぶところは徹底的に遊ぶ、そんなメリハリの効いた脚本が光る。
だが、おふざけだけでは人気ドラマたり得ない。「ドクターX」の最大の魅力は、作品の芯を貫く未知子の「救える命は絶対に救う」というシンプルな信念だ。今シーズンは特に、未知子の医者としての思いが色濃く打ち出されたシーズンだった。
9話では、かつての未知子と同じ難病、ステージ3の後腹膜肉腫に冒されたロックスター・九藤(宇崎竜童)に、未知子が「私、失敗しないので」を言い続ける理由を明かした。
「最初は怖くて震えた。医者は絶対失敗できない。だから自分に言った。『私は失敗しない』って声に出して言った。そういう自分に打ち勝たないと、患者の命救えないから」と打ち明けた未知子。九藤の「あんたもギリギリで勝ってきたんだな。俺の手術も…勝てるか?」の問いかけに「必ず勝つ。私、失敗しないので!」と言い切った。
9話を執筆したのは大門未知子の生みの親・中園氏。ついに描かれた未知子が「失敗しない」理由に、ネットでは感動の声が渦巻いた。