瀬戸康史、三吉彩花 あらゆるタブーを内包した舞台『母を逃がす』に出演「挑戦といえる作品」 <Interview>

2020/02/28 12:00 配信

芸能一般

三吉彩花撮影=山内洋枝(PROGRESS-M) ヘア&メーク=CHIHIRO(TRON) スタイリスト=森保夫(ラインヴァント)


――三吉さんは先ほどリクを「はちゃめちゃな役」とおっしゃっていましたが、リクを演じられる上で大切にしていきたいことは、どんなことですか?

三吉:リクは登場シーンから、いきなり半裸なんです(笑)。セクシャリティもさらけ出している女の子なので、そこは稽古が始まる前に役を作りすぎずに、ノゾエさんに身を委ねたいなと思っている部分です。特にリクと峯村リエさん演じる島森との関係性は、2人でやりとりをしている上で生まれてくる感情や芝居を大事にしたいです。

私がこれまで演じてきた役とは、ぜんぜん違う役柄。リクに関しては、芝居を上手に見せようということは一切考えていなくて。リクと二人三脚で、ちゃんとリクに命を吹き込んで舞台の上で地に足をつけて生きるということを大事にしていこうと思っています。

――瀬戸さんは、雄介を演じる上でどんなことを大事にしたいですか?

瀬戸:稽古に入ったら変わるかもしれないんですけれど、そこにある常識が何なのか、その周りにある常識が何なのか……ということは大事にしたいですね。

あとは彼らの行動には、必ず何かしらの思いがあるということ。そこが抜けちゃうと、一気にすごく遠くなる感じがするんですよ。それは客席と我々というのもあるし、自分と役というのもそうだし。何かしらの感情に振ってやることで、見えてくるものもあるんじゃないかなとは思っています。

『母を逃がす』チケットは3月1日(日)より一般発売開始撮影=山内洋枝(PROGRESS-M) ヘア&メーク=CHIHIRO(TRON) スタイリスト=森保夫(ラインヴァント)


――この作品では、登場人物がみんな欲望にまみれているじゃないですか。おふたりの個人的な欲望は何ですか?

瀬戸:欲望かぁ……、全然ないんだよな(笑)。

三吉:私もです(笑)。

瀬戸:欲望とはちょっと違うかもしれませんが、常に思っていることはありますね。僕は性格的に、良い意味でも悪い意味でもすごく頑固なところがあるんです。「柔軟になりたい」ということではなくて、ちょっと漠然としてるんですけれど、「変えたい」というか「変わりたい」というか、そういう気持ちがすごく強いですね。

三吉:私も欲望というより、願望なのですが、無になる時間が欲しくなるんですよね……。

小さいころからお仕事をやらせていただいていますが、自分の中では、普通の人として生きている感覚と、女優としての感覚、どちらも持っていたいという気持ちが強いんです。どっちもいいバランスでコントロールしていくためにも、無になる時間が欲しくなります。

――どんなことをすれば、無になれるのでしょう?

三吉:ひとりで、海外にフラリと行きますね。とりあえず日本から出て、知らない所に行って、ひとりの時間を持ちたくて。それで、自分が何をしたいのか、何が楽しいのか、何が大変なのか、それを誰に話せて誰に話せなくて、どう消化してるのかを整理したいんです。

瀬戸:それ、海外じゃないとダメなの? だいぶお金がかかりますね(笑)。

三吉:台湾とか韓国など、近場でいいんです。とりあえず、私のことを誰も知らない場所がよくて。

――瀬戸さんは、無になるためにすることはありますか?

瀬戸:僕は、絵を描いている時は無になりますね。

――瀬戸さん演じる雄介は、リーダーという立場にプレッシャーを感じて悪戦苦闘しますが、瀬戸さんご自身も今回、座長というリーダーです。そこに、プレッシャーは感じますか?

瀬戸:変にプレッシャーを感じるということは、ないですね。まずはこの作品を成立させることを最優先に考えるべきだと思ってやっています。

雄介はリーダーという立場に固執しますが、僕自身はリーダータイプではないと思っているんです。現場の空気を良くするというか、風通を良くするのが僕の役目なんじゃないですかね(笑))。先輩方もたくさんいらっしゃいますし、誰が1番最初に立つとかいうことよりも、みんなでどうするか考えてやっていきたいです。

――瀬戸さんが役者として、この作品に期待していることは?

瀬戸:松尾さんの台本が、この俳優陣に混ざり合うことでどうなるのか……ということですね。

そもそも「大人計画」のためにあてがきで書かれた部分もある台本なので、僕が演じる雄介は、阿部サダヲさんが演じる前提なんですよ。先日、阿部さんに会ったときには、軽く「大丈夫、大丈夫。観に行くね」と言われましたけれど(笑)。まぁ、どうしても阿部さんの姿というのは浮かぶわけです。それも受け入れて、いい具合に噛み砕いて、僕ならではの、オリジナルの雄介になっていければいいなと思っています。

取材・文=坂本ゆかり