――序盤はハーモニカをはじめとした楽器の演奏シーンがたびたび登場します。練習はどれぐらいされたんですか?
ハーモニカ、指揮、楽譜・譜面の書き方、オルガン…などを、撮影に入る前、約1カ月ぐらい練習をしました。
自分はいすに座っていて、先生が回転ずしのように回っている感じです(笑)。特にハーモニカは難しかったです。
1人でハーモニカを吹くシーンは実際の音を使うので、撮影は緊張というか、何とも言えない感覚でした。
――印象に残っている演奏シーンは?
人生のどん底の中、1人でハーモニカを吹くシーンがあったんですけど、ちょっと音が外れたり、音にならない音が出たことがあったんです。
音楽としては成立してないけれども、気持ちを表すという意味では成立しているからOK、という監督の決断になりまして、そこは使われることになりました。
そのときの環境で音楽は変わるんですよね。誰かのために吹くと音も変わるし、振る指揮棒の強さとか体に入る力も変わる。技術と気持ちが行ったり来たりする、というのはすごく感じました。
――得意な、もしくは好きな楽器は?
指揮が好きですね。もちろん難しいですけど、演奏家の皆さんはプロの方たちなので、僕が指揮棒を振ると合わせてくれる気持ち良さがあります。
――窪田さんはダンスの経験がありますが、音楽をテーマにした作品にその経験は生きましたか?
楽器の技術は別ですが、指揮者として体現するところなど、表現として強弱をつける、という部分でつながることはあるかもしれませんね。
――舞台は福島ですが、福島弁はいかがでしたか?
今では先生の福島弁指導がいらなくなるくらい馴染んでいます。
以前にも大阪弁とか方言はいろいろやらせてもらったんですけど、福島弁が僕の歴代で一番方言指導をされなくなった方言ですね(笑)。
福島弁はすごく愛嬌があるし、聞いているだけですごくほっこりしたり愛情が持てたりするという印象です。
――「エール」というタイトルに込められた思いについて、どう考えていますか?
古関さんは戦争の時代を経験していらっしゃるので、人の痛みを肌で感じてきたと思います。
だからこそ、人に寄り添ったり、人に寄り添う音楽を作ったりすることが、たぶん古関さんの中で一番の幸せだったと思いますし、それが例えばビジネスにならなかったとしても良かったんだと思います。
「エール」というタイトルはいろんなとらえ方があると思うんですけど、僕の中では「愛情」だと思っています。その「愛情」がメロディーに乗っていろんな人に届き、語り継がれている、ということが全ての証明なのかなと思っています。
――窪田さんご自身が“音楽”に励まされた経験はありますか?
中学3年生の文化祭で、課題曲だった「大地讃頌(だいちさんしょう)」の指揮者をやったんです。
高校に上がる前で、この先どうしようか悩んでいたときに聞いていたので、僕の中ですごく大切な曲です。今でもたまに聞きますし、その頃のことを思い出したりしますね。
――なぜ指揮者をやることに?
内申点稼ぎで…っていうのは嘘です(笑)。じゃんけんで負けました(笑)。
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