柄本佑、石橋静河、染谷将太ら出演の『きみの鳥はうたえる』と『レディ・バード』が映し出す青春時代の儚さと愛おしさ<ザテレビジョンシネマ部>

2020/03/20 07:00 配信

映画


『きみの鳥はうたえる』(C)HAKODATE CINEMA IRIS


『きみの鳥はうたえる』(2018)


映画化された『海炭市叙景』(2010)、『そこのみにて光輝く』(2014)、『オーバー・フェンス』(2016)などで知られる佐藤泰志の同名小説を、柄本佑石橋静河染谷将太ら若手実力派俳優の共演で映画化。

北海道を舞台に、当てもなく日々を過ごす若者たちのひと夏を通し、永遠のように感じられた永遠ではない日々を映し出す。

『レディ・バード』を観たのなら、あなたの心はきっと満たされていることだろう。これから新たな世界へ羽ばたこうとしているクリスティンの気持ちと同調し、親への感謝も強く抱くことができ、一種の達成感すら得られているかもしれない。が、誰しもがその身をもってご存じの通り、生きている限り人生は続いていき、大人になれば、また新たな荒波にもまれていく。

何かを乗り越えることができたのなら、また新たな壁や障害が現れる。人生は絶えずその繰り返し。一時的な高ぶりなど、いともたやすく折られてしまう。そうしてなかなか乗り越えることのできない日々をさまよい続けているのが本作の登場人物たち。

【写真を見る】柄本佑、石橋静河、染谷将太らが20代の悶々とした時間を過ごす若者を演じる(C)HAKODATE CINEMA IRIS


20代を迎え、人生が順風満帆に進んでいく人もいれば、そうじゃない人もいる。むしろ、後者がほとんど。社会という広大な世界へ身を投じ、明確な答えが存在しない人生の中で自分だけの歩むべき道を見いだしていく。

すんなり自分の道筋を見極められれば良いが、自分がどうしたいのか、何をすべきなのかをうまく見極められなければ、足踏みを余儀なくされる。今まさにその境地にいる人ならば、一見自堕落とも思える本作の若者たちの日常に共感できる何かがあると思う。

また、その境地をいかなる形であれ乗り越えられた人ならば、あのずっと続くようで限りある日々を、時には地獄のようにも天国のようにも思えたあの時間を、懐かしんだり尊ぶこともできるだろう。