数々の難問物件を手掛けてきた匠だが、“ポツンと一軒家”のリフォームは初めて。
事実、番組で紹介されたように、家にたどり着くまでで、早くも苦労の連続。軽トラックがなんとか1台通れる道幅で、ガードレールも柵もなく、運転を誤れば、すぐ横の崖に転落してしまう。
これではリフォーム用の資材を運ぶだけでも命がけ。この道をクリアしても、今度は急こう配の坂道を20分以上歩かねばならない。
匠は今でもフルマラソンに出場するほどの体力自慢の持ち主だが、さすがに途中で息が上がる。匠は「ポツンと一軒家をビフォーアフターするっていうこと自体が、ハードルが高いです」と動揺を隠せない。
しかも、やっとの思いでたどり着いた家の中は廃墟同然。一家がこの家に住んでいたのは、Sさんが小学三年生の頃まで。人が住まなくなってすでに約50年が経つ。
物置と化した家の中は、老朽化が進んで荒れ放題だった。特に玄関を入ってすぐの居間は傷みが激しく、床が完全に腐って抜け落ている。北側の壁も崩れて、風が吹き込み、ほぼ外と変わらない有様だ。
しかし家の建具を見た匠は「こういう建具はない。この建具を見た瞬間にいい建物だなって」と目を輝かせる。柱や梁は、森の木の代弁者、松永が感心するほど太くて立派な木が使われていたのだ。
Sさんによると、この家はかつて林の中から木を切り出して作ったという。他にも、先ほど歩いた急こう配の道が、Sさんの父親の手作りだったなど、驚くべき事実が次々と判明する。
匠が、半世紀近くもの間、閉ざされたままだった縁側の雨戸を開け放つと、美しい茶畑と、はるかかなたまで幾重にも連なる山々が広がる。
その絶景を眺めた匠は、がぜん闘志がわいてくる。この朽ちていく家をなんとかしたい。そして次の世代に引き継がせたい。逆境になればなるほど燃えるのが匠のさが。
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