寝起きの瞬間を撮って自分でナレーションを乗せているのだが、寝起きは演技だと明かし、その演技を客観的に説明しているのである。
「エール」の恵のように、一見、ちょっとおバカに見える役は、本当のおバカさんにはできないもので、冷静にどういう言動がおもしろいか、観察したうえで的確に動くことが大事。
仲里依紗は冷静に、ぶりっ子な芝居や、極端に芝居がかっている芝居や、薄幸を再現する。おそらく、自分に限界を作らずに思いきり良くやりきることのできる俳優なのだろう。
「エール」8週では裕一が、西洋音楽を学んできた自分は大衆向けの楽曲など作れないと自分の可能性を狭めていたが、仲里依紗の芝居はそういうふうに自分を縛ることなく、世の中のあらゆる人間の悲喜劇をつぶさに観察し、再現できる喜劇の才能のある俳優なのである。
「エール」でヒロインを演じている二階堂ふみもそういうタイプだと思うが、ドラマのシリアスなテーマも背負っているので、主演の窪田正孝と共にコミカルな芝居もありつつ、ここぞというときはシリアスな芝居もやらねばならない。
その点、バンブーは息抜きの場面として機能する。喜劇のうまい俳優・野間口徹が絶妙な受けの演技をするので、仲はその手のひらのなかで自由に動き回っているという印象で、バンブーは「エール」のなかで安心して笑える場所になっている。
6月6日にはNHKで中尾明慶と夫婦でリモートドラマ「Living」に出演すると発表されていて、そちらではどんな姿を見せてくれるか、楽しみである。(文・木俣冬)
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