ロバート・レッドフォードは言わずと知れた、映画史上にその名を刻む“永遠の美男子”だ。とりわけ絶頂期の1970~80年代には、ハリウッドを代表するスーパースターとして世界中を魅了。年を重ねたその後も、カリスマ性衰えぬスターとして、監督として、そしてサンダンス映画祭を主催するサンダンス・インスティテュート(名前は彼が『明日に向って撃て!(1969)』で演じたサンダンス・キッドに由来)の活動を通じた若き才能への支援者として、偉大なるキャリアを築き上げた。
そんなレッドフォードが俳優業からの引退を公言した最後の主演作『さらば愛しきアウトロー(2018)』(7月12日(日)夜9:00、WOWOWシネマほか)は、引退を惜しむファンを悲しい気分にさせるどころか、誰もが微笑まずにいられないチャーミングな快作だった。
彼が演じた実在の人物フォレスト・タッカーは、幾度となく銀行強盗を繰り返し、16回もの脱獄を成功させた伝説的な犯罪者。この紳士強盗は銀行の支店長や窓口係に礼儀正しく接し、拳銃をちらつかせながらも誰ひとりとして傷つけなかったという。
くしくもレッドフォード自身の出世作『明日に向って撃て!』と同じ銀行強盗役という巡り合わせに加え、人生を“楽しむ”ために颯爽と危険な犯罪を重ねていくタッカーの姿は、レッドフォードの俳優人生そのものにオーバーラップする。
このたび『さらば愛しのアウトロー』の放送に合わせて組まれたロバート・レッドフォード特集には、ベスト・セレクションといっても過言ではない作品が揃った。
むろん、それ以外にも『明日に向って撃て!』や『華麗なるギャツビー(1974)』、『大統領の陰謀(1976)』、『スパイ・ゲーム(2001)』といった数多くの傑作、名作があるが、過酷な水上ロケに挑んだ『オール・イズ・ロスト〜最後の手紙〜(2013)』(7月17日(金)昼4:45、WOWOWシネマ)含め、放送作品はいずれもファンの間でトップ・クラスの人気を誇り、俳優レッドフォードを象徴する魅力が刻まれた作品ばかりである。
レッドフォードに悪役は似合わない。しかし彼自身はアウトローというキャラクターを好み、どこか茶目っ気のある犯罪者を演じさせたら天下一品だった。『明日に向って撃て!』に続いてジョージ・ロイ・ヒル監督、親友のポール・ニューマンとタッグを組んだ『スティング(1973)』(7月14日(火)夜6:45、WOWOWシネマ)は、まさしくその個性が最大限に発揮された軽妙洒脱なコンゲーム・ムービーだ。
また今回の特集には、レッドフォードのフィルモグラフィを振り返るうえで欠かせない名匠シドニー・ポラックとのコンビ作が3本含まれている。そのうち『追憶(1973)』(7月13日(月)夜7:00、WOWOWシネマ)と『愛と哀しみの果て(1985)』(7月16日(木)夜6:15、WOWOWシネマ)は、レッドフォードの類いまれなほど端正なルックスが際立つメロドラマ。
『追憶』で披露した海軍士官の制服姿は当時の女性ファンを歓喜させ、『愛と哀しみの果て』でメリル・ストリープを相手に演じた自由気ままな冒険家役には、プライベートでは雄大な自然をこよなく愛するレッドフォードの人生観が投影されているかのよう。
もうひとつのポラック監督作品『コンドル(1975)』(7月12日(日)夜7:00、WOWOWシネマ)は、CIA局員の逃避行を描いたスパイ・スリラーで、硬派で知的な役柄も得意としたレッドフォードのクール&スマートな魅力を堪能できる。
メジャーリーグのオールド・ルーキーを演じた『ナチュラル(1984)』(7月15日(水)夜6:30、WOWOWシネマ)は、詩情豊かでノスタルジックな味わいのスポーツ・ドラマだ。苦難の過去を乗り越えて夢を追い、信念を貫く主人公のキャラクターは、まさにレッドフォードのはまり役。
組織やチームに属しながらも、ひときわ輝く孤高の存在感を放っているところが、いかにもレッドフォードらしい。こちらはディレクターズ・カット版での放送。
そして『さらば愛しきアウトロー』には、「これぞレッドフォード!」と快哉を叫びたくなる素敵なエンディングが用意されている。“永遠の美男子”が“永遠のアウトロー”としてスクリーンから去って行くその鮮やかな退き際を、しかと脳裏に焼きつけたい。
純真な少年時代に恐ろしい映画、謎めいた映画を観すぎて、人生を踏み外した映画ライター。毎日新聞、DVD&動画配信でーた、映画.comなどで映画評を執筆。
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